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2023.03.25 13:30

科学の力で時差ぼけ解消 「マッドサイエンティスト」が生んだ新製品

安井克至
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(C)Fount

時差ぼけは、旅行者の93%近くが経験する問題だ。体の回復と時差への適応には、タイムゾーンが1時間変わるごとに1日要するとされる。だが、そこまで長く待てない人は、どうすればよいのか?

体の健康とパフォーマンスの向上を支援するプログラムを提供する米企業Fount(ファウント)は、時差ぼけを解消する製品「FlyKitt(フライキット)」を開発した。サプリメントや、特殊配合のコーヒー飲料、遮光眼鏡などの健康グッズとテクノロジーを組み合わせたもので、利用者の95%に効果があるという。

このアイデアを思いついたのは、文字どおりの「マッドサイエンティスト(常軌を逸した科学者)」だ。

ファウントの創業者アンドリュー・ハー最高経営責任者(CEO)は、米陸軍から2度にわたり「マッドサイエンティスト」に選ばれた人物。米軍でヒューマンパフォーマンスや生命工学の戦略に関わった経歴から、プロのスポーツチームや軍の特殊部隊、テックや金融系といった幅広い分野の一流企業や世界クラスの科学機関から信頼されるアドバイザーとなった。

ハーは、米海軍特殊部隊「ネイビーシールズ」のパフォーマンス向上に取り組んでいた際、気圧の大幅な変化によって引き起こされる時差ぼけの問題を初めて認識した。ハーは筆者に対し「飛行機を利用する際に生じる大きな気圧の変化により炎症反応が起こり、思考や感覚、パフォーマンスが低下し、迅速に概日リズムをずらすことがほぼ不可能になる」と説明した。

ハーが率いるファウントのチームは、この問題の解決に取り組み始めた。そして数年にわたる研究開発の末に生まれたのが、フライキットだ。人工知能(AI)を活用して個人に合わせカスタマイズされるフライキットは、プロのスポーツチームや特殊部隊の時差ぼけ解消に貢献してきた。

利用方法はシンプルだ。これから行う旅についての情報を入力すると、AIがそれに合わせ、カスタマイズされたフライキットを作成する。価格は199ドル(約2万6000円)からだ。キットは自宅まで配送される。サプリメントや遮光眼鏡「概日移行ドリンクミックス」を組み合わせ、免疫の強化とエネルギー水準の調整、概日リズムの移行を支援するものとなっている。

ハーは「ファウントでの私のミッションは、世界で最も高度な健康・パフォーマンス支援策を開発し、多くの人の目標達成のために活用してもらうことだ」と語った。

「私たちは現在、軍やスポーツ、ビジネス界の優秀な人材に商品を提供しているが、こうした人々は少ない。そのため、フライキットを一般向けに発売できることをとてもうれしく思う。ネイビーシールズや戦闘機パイロットらと協力し、約10年にわたる研究開発が必要だったが、今はあらゆる人に使用してもらう準備が整った。これは、私たちのミッション達成に向けた最初の一歩であり、非常に興奮している」

forbes.com 原文

編集=遠藤宗生

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