2023.03.25

EVの「電池交換ステーション」の米Ampleが日本進出を計画中

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電気自動車(EV)の普及の足かせの1つが、バッテリーが切れる前に充電ステーションを見つけられないのではという、充電に対する不安だ。そんな中、サンフランシスコのベイエリアに本拠を置く「アンプル(Ample)」は、バッテリー交換という斬新なソリューションを考案し、カリフォルニア州政府から多額の補助金を獲得した。

同社のサービスのユーザーは、専用モジュールを搭載した車で充電ステーションに行き、空になったバッテリーをフル充電したものと交換する。交換に要する時間は10分ほどで、ユーザーは、定額の利用料を支払うことで、このサービスを利用することができる。

「バッテリー残量が少なくなったときに交換ステーションに向かえば、100%充電した状態で再び走行できるようになる。使い慣れたガソリンスタンドと同じような体験でありながら、価格はガソリンよりも20%ほど安い」と同社の創業者でCEOのKhaled Hassounahは話す。

アンプルは、現状では主にウーバーのライドシェア車両向けにベイエリアで12カ所のバッテリー交換ステーションを運営している。同社は2月28日、カリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)から1500万ドル(約20億円)の補助金を獲得したことを発表した。



Hassounahによると、アンプルはすでに自動車メーカー7社と提携しているという。彼はインタビューでは社名を明らかにしなかったが、今後数週間のうちに公表する可能性があるという。ウーバーで公共政策マネージャーを務めるセス・スミスは、ブログの中で次のように述べている。

「カリフォルニア州大気資源局(CARB)は、2030年までに州のライドシェア車両による走行距離の90%をゼロエミッション車にすることを義務付けており、中間目標は2023年から開始される。アンプルのバッテリー交換は、カリフォルニア州のクリーンマイル基準に準拠する上で重要な役割を果たす」

CECがバッテリー交換事業者に投資するのは今回が初めという。「バッテリー交換技術は、自宅で充電ができない人や、急速充電が必要な長距離ドライバーにとって良いソリューションになる」と同委員会は、報告書の中で述べている。しかし、カリフォルニア州ではバッテリー交換に対応した車両がまだ販売されておらず、自動車メーカーもそのような車両を量産する意向を示していない。

京都にも進出を計画

一方、EVの人気が非常に高い中国では、バッテリー交換が広く普及している。CECの報告書によると、中国の工業・情報化部は2021年10月に1000カ所を超えるバッテリー交換ステーションと、トラックを含む10万台のバッテリー交換車両を配備するパイロットプロジェクトを発表したという。また、中国で2021年に販売されたゼロエミッションの大型トラックのうち、バッテリー交換可能な車両が30.7%を占めたという。

Hassounahによると、同社は海外ではスペインのマドリッドと京都、米国内ではロサンゼルスやニューヨーク、ヒューストン、シカゴ、マイアミに進出することを計画しているという(アンプルは、日本ではENEOSホールディングスと提携している)。

「我々の交換ステーションは非常に安価に設置が可能で、地面を掘る必要がなく、すべてが地上に建設されるため、数日以内にステーションを配備することができる」と彼は話す。

「ガソリン車のドライバーがガス欠を心配しなくて済むのは、給油が必要になったらガソリンスタンドに数分立ち寄るだけでいいからだ。我々は、EVでまったく同じことを実現しようと考え、ガソリンスタンドのような体験をEVのドライバーに提供している」とHassounahは語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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