個人のプライバシーは犠牲に? 全米で広がるセキュリティロボットの問題

「Knightscope(ナイトスコープ)」社のセキュリティロボット(Michael Vi / Shutterstock.com)

いち早く終息宣言を出し、コロナ禍前の日常に復帰したかのように見えるアメリカだが、負の影響はさまざまなところに現れている。

特に問題なのは、物流や製造ラインの人手不足によって、およそすべてのものが不足し、商品や部品を手に入れるまでの待機時間が長くなっていることだ。

例えば、それは新車や中古車の値段の高騰となって現われており、同時に部品の入手まで困難ともなっている。そのため、全米で駐車中の自動車からパーツを盗む事件が多発している。なかでもキャタリティックコンバータ(触媒)は、その大きなターゲットとなっている。

カジノもセキュリティロボットを導入

実際、ラスベガスに住む筆者のオフィスの駐車場でも、四方からの人の目があるにもかかわらず、盗難事件が頻発している。

設置されたセキュリティカメラの映像を見ると、犯人は車でやってきて、駐車中の車を物色し、ニーズの高い部品を搭載したターゲットを見つけると、その横に駐車し、車の下にもぐり込んでコンバーターを取り出し、盗んでいく。

その手口はわずか30秒。帰りがけに、また別の狙いに適う車を見つけると、停車して、もぐりこんでまた30秒。その一部始終をセキュリティカメラの映像で見ると、その犯罪の生々しさは、なんとも気持ちが悪い。

しかも、その映像を見た1カ月後、今度は筆者自身の車も盗難未遂に遭い、ドアの取っ手が壊されていた。セキュリティカメラは鮮明に犯人の車を捉えていたが、距離も離れており、角度もあったせいか、残念ながらナンバープレートまでは読み込めなかった。

オフィスの一帯はとても治安のいい地域だったのだが、コロナ禍以降、そうも言ってはおられない状況に変わってきていて、盗難届けも多いためか、警察は、インターネットで被害届を出した筆者に電話さえかけてこなかった。

実際、全業界を横断する人手不足のなかでは、警察官のなり手も少ない。給料を上げようとしたところで、人材プールそのものが枯渇しているので、そういう対策も効果がない。その慢性的な人手不足のなかで現れたのがセキュリティロボットだ。

去年、日本に帰国した際、ファミリーレストランで配膳をするロボットを見かけたことがある。センサーが組み込まれているため、物や人にぶつからないようになっており、ここまで自動運転という技術は確立されているのかと驚いた。

セキュリティロボットは、その配膳するロボットに高度な人工知能や複数のカメラを搭載し、捉えた多くの画像から不審な行動をする人物を特定して、その対象に近寄って行ったり、監視ルームに警告を出したりする。

具体例として、ラスベガスの大型カジノリゾート「Mリゾート」では今年に入ってから、駐車場や車寄せをセキュリティロボットにパトロールさせていて、その名も「M-Bot」と呼ばれている。

M-Botは、高さ150センチメートル、重量200キログラムの自走ロボットで、白い色や丸みを帯びた体型がやや映画「スターウォーズ」シリーズのR2-D2を思わせないでもない。特筆すべきは、カメラとセンサーを50個も内蔵していることだ。とはいえ、カジノの警備でもあるので、外見はすっきりとスマートで、「愛されキャラ」でもあるようだ。
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文=長野 慶太

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