個人のプライバシーは犠牲に? 全米で広がるセキュリティロボットの問題

「Knightscope(ナイトスコープ)」社のセキュリティロボット(Michael Vi / Shutterstock.com)

ラスベガス・リビュージャーナル紙によると、ロボットは「Mリゾートへようこそ。私は M-Botです」などと、10個の定型文句を自分の判断で喋るようになっているという。いまでは、このロボットが動きまわるところ、人だかりができて、ソーシャル メディアへの投稿も増え、カジノの集客にも貢献しているという。

ロボットなので充電時間以外はフル活動で、1日22時間は稼働しているという。1カ月では延べ500キロもパトロールするという。自分で警備警護に自走するだけでなく、リゾートのゲストが緊急時の際には、監視ルームへ連絡できる緊急ボタンもついている。

現在は、カジノ関連法案によって(個人のプライバシー保護のために)、カジノの建物の中には入れないので、もっぱら駐車場や建物の周辺の警備が中心だが、駐車しているすべてのクルマのナンバープレートを記録している。

製造元である「Knightscope(ナイトスコープ)」社は、シリコンバレーの中心、マウンテンビューに本社を置くアメリカのセキュリティカメラおよびロボット工学の会社で、完全自律型セキュリティロボットの最も有名なメーカーの1つ。たった9年間で株式上場も果たしている。

前述の配膳するロボットと違い、完全に自律的であり、武器を探知し、人工知能を使って疑わしい行動を検出することができ、警察や施設警備チームとの連携にも優れている。

実際、サンフランシスコ警察や全米各地のショッピングモールなど、同社のロボットのユーザーからは、配備された地域では犯罪率が低いと報告されている。

もちろん、犯人の逮捕や拘束のようなことは警察官や警備員でないとできないが、それ以外の部分ではむしろAIを使うぶん、人間を超える働きも期待されているのと、パトロール距離を圧倒的に増やすこともできるのが魅力だ。

個人のプライバシー保護が問題

とはいえ、いまのところセキュリティロボットの最大の問題は、個人のプライバシー保護だ。

シリコンバレーでは、新技術を開発する会社が集まる一方で、その技術が持ち込む新たな法律問題をサポートする法律事務所も多く存在している。そのなかの1つ「シリコンバレー・ロー・グループ事務所」によれば、セキュリティロボットについては、もはや情報を集めるハードの問題ではないという。
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文=長野 慶太

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