ポイントは「子どもたちの成長を助けること」
組み立て式のボールを目にした時、子どもたちに大きな変化が起こることを内田氏が目の当たりにしたのは、プロトタイプ(試作品)の状態のMY FOOTBALL KITを持ってカンボジアやタイ、南アフリカに行ったときだという。「日本の子どもたちは、幼少期から当たり前のようにレゴや積み木といったものが身近にあって遊ぶことができます。ところが途上国の子どもたちはそういった遊具を手にすることはありませんし、学校に図画工作の時間もありません。しかし、MY FOOTBALL KITをあげるとのめり込むように集中してずっと組み立てていました。
実は、今の製品は30~45分ぐらいで組み立てられるようになっているんですが、プロトタイプの時は2~3時間かかってしまったんです。でも一人も投げ出すことなく、飽きずに取り組んで完成させていました。それを見た時、間違いなく教育に貢献すると確信すると同時に、本当にこれを作って良かったと思いました」
部品を前にした子どもたちは、組み立て方が分からない子はわかる子に訊き、わかる子はわからない子に教える。それこそまさに内田氏が目指した子どもたちの成長のきっかけとなる場だった。
「自分の力でボールを組み立てることにより達成感が生まれ、自分の力で作ったものだから大切にする。そういった一連の体験によって子どもたちの成長を助けること。MY FOOTBALL KITの一番のポイントは、そういった教育的な側面なんです」
MY FOOTBALL KITのプロジェクトに教育面でのアドバイザーとして参加している花まる学習会代表・高濱正伸氏は、その時の子どもたちの様子を見て「パーツが組み合わされて立体になっていくことに、子どもたちは単にワクワクするだけではなく、脳を刺激されているのが見て取れる」と言っていたそうだ。まさに教育的効果だろう。その他にも、キットを手にした子どもたちの反応に驚かされることはたくさんあったと内田氏は語る。
「ある企業の協賛で、元プロサッカー選手を呼んでサッカークリニックのイベントを開催した時のこと。元選手の優れたテクニックを見る前にMY FOOTBALL KITの組み立てを子どもたちにしてもらいました。
タイとミャンマーの子どもたちも招待したんですが、いつの間にか自然とコミュニケーションが生まれていたんです。だから、その後のゲームでも別に何か言ったわけでもないのに、国籍関係なくみんなが混じり合って楽しんでいたのにはびっくりしました」
また、MY FOOTBALL KITは、視覚に障がいがあっても組み立てられる。
内田氏が以前参加した活動では、一番早く組み立てたのが目が見えない子どもだったのだそう。触覚で、穴が2種類、突起が2種類あることがわかったとき、それを繋げればいいのだとすぐに理解したらしい。
ブラインドサッカーをしているその子は、指導者に「目が見えるようになることは不可能なんだ。今あるものを最大限に生かすようにしなさい」と言われたことをきちんと胸に刻んでいる。MY FOOTBALL KITにできることは、まだまだ無限にありそうだ。