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2023.03.20

「マンガ」好きに新しいデジタル読書の選択肢を 米アズキの挑戦

Getty Images

日本のマンガは、米国のコミック市場でこの十数年間に最も急成長した部門だ。その成長速度は子ども向けグラフィックノベル以外の全部門を上回り、英語圏の読者にはかつてないほど多くのマンガが提供されている。にもかかわらず、日本の出版社が制作するマンガの総数から見れば、それはほんの一握りでしかない。

VIZ Media(ビズメディア)や講談社などの出版社が正規のアプリを通じて提供する厳選コンテンツだけでは満足できないマンガファンは、海賊版サイトでなら読みたい作品が見つかることを知っている。つまり、価格設定が手頃で品揃えが魅力的であれば、日本の小規模出版社とのライセンス契約を通じて、英語圏では未公開のオリジナル作品を倫理的なファンに合法的に提供する新事業を立ち上げる余地があるのだ。

Azuki(アズキ)は、最近市場に参入した1社だ。2019年に業界の若手ベテラン5人(アデラ・チャン、アッバス・ジャファリー、エバン・ミント、クリスティン・ナイゼス、ケン・ウラタ)が共同設立した仮想企業で、パンデミックのさなかにアプリを立ち上げ、着実に成長を続けてきた。スタートアップアクセラレーターのY-Combinator(Yコンビネータ)から資本注入を受け、提供作品数を急速に伸ばしている。従業員数も数十人に増えたが、現在もオフィスは構えず、バーチャル形態で運営されている。

最高経営責任者(CEO)のジャファリーによると、彼らはソニーグループ傘下のアニメプラットフォームCrunchyroll(クランチロール)などで働いていた仲間たち。退職後も連絡を取り合っていたが「(マンガアプリの)既存モデルに対して全員同じような問題を感じていたため、自分ならどんなアプリが欲しいかを追及しながら、持てるすべてを持ち寄って」Azukiアプリを作ったという。

Azukiアプリはサブスクリプション形式で、サービス開始当初の目玉は、講談社の米国法人Kodansha USAと、日本のマンガの英訳出版を手掛ける米出版社Kaiten Books(カイテン・ブックス)から出版されたシリーズ作品だった。品揃えはすぐに他の出版社や、アズキが直接ライセンスを取得しローカライズした独占タイトルにも拡大。現在は、『組長娘と世話係』『BLITZ』『ガチャを回して仲間を増やす 最強の美少女軍団を作り上げろ』『進撃の巨人』『炎炎ノ消防隊』など200タイトル余りを提供し、双葉社、マイクロマガジン社、米出版社のABLAZEStar Fruit Books(スターフルーツブックス)とも提携している。アズキによれば、ユニークアクティブユーザー数は100万人を超え、提供コンテンツは3000万ページにおよぶ。
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編集=荻原藤緒

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