マルチバースは、2023年アカデミー賞作品賞を受賞した映画『Everything Everywhere All At Once（エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス）』の中心をなす設定だ。映画では主人公である中国人の移民がパラレルワールドを行き来して、まったく別の人生を送る。
しかし、マルチバースに何らかの科学的根拠はあるのか？
映画では、ミッシェル・ヨー演じるエヴリン・ワンが、パラレルワールドにいる別バージョンの彼女自身と接続してマルチバースが破壊されるのを防ごうとする。奇想天外なストーリーだが、現在、宇宙論研究者たちは平行して進んでいる複数の宇宙が存在するかどうか、そしてそこは存在可能なのかどうかを解明しようとしている。
マルチバースとは何か？
宇宙論研究者や量子理論家の間には、私たちの宇宙が唯一ではなく、他の複数の宇宙と上位構造を共有しているかもしれないというアイデアが数多くある。「宇宙の初期段階の急膨張（インフレーション）は恒久的であり、個々の宇宙はそこから生まれていると示唆する人々もいて、それぞれ独自の物理法則を根拠としています」とオーストラリー、シドニー大学の宇宙物理学教授で、『Where Did the Universe Come From? And Other Cosmic Questions』の著者であるジェラント・ルイスはいう。マルチバースに関するこの宇宙論的説明は、私たちの宇宙と平行する宇宙が存在する場合、そこは生命を維持できるかもしれないし不可能かもしれないとしている。もちろん私たちの宇宙における急膨張は、宇宙が高温、高密度な地点、ビッグバンから生まれたことを示す重要な証拠だ。しかし、ビッグバン以前に何が起きたのか、そして別の宇宙が、おそらく私たちの宇宙と同時に生まれたのかどうかは一切解明されていない。
