第二回は、Qコマース(クイックコマース:注文から数十分以内に配達される)の宅配スーパー「OniGO(オニゴー)」を展開する梅下直也(うめした・なおや)さん。OniGOは、スマホアプリから注文後最短10分で食料品や日用品を受け取ることができるサービスだ。
同社は2021年6月に創業。2022年4月に7億2000万円の資金調達を実施した。時短ニーズの強い子育て世代、リモートワーカーを中心に都内で多くのユーザーを獲得し、サービス拡大と急成長を続けている。日本版Qコマースの「鬼速」フロントランナーとして知られ、連続起業家でもある梅下さんに、起業家としての子どもの教育や経営方針について話を聞いた。
・インタビュアー Plug and Play Ventures Principal 馬静前
コンサルティングや証券会社を経て、2021年からPlug and Play Venturesに参画。日本のスタートアップ投資業務全般を統括。
起業に必要なのは無人島で生き延びるスキル
──もともと大手金融機関に勤めていましたね。Qコマースで起業したきっかけを教えてください。Qコマースを選んだ理由は2つあります。一つ目は、誰でも気軽に利用できる生活に密着したサービスであるため、大きな成長が見込めること。二つ目は、人々のQOL向上に貢献できること。Qコマースサービスを通して、ユーザーの買い物に使う時間を短縮させ、やりたいことに集中できる時間を増やせることに意義を感じました。
特に2022年に娘が生まれ、仕事と育児の両立や子育ての大変さを知るなかで、OniGOが価値あるサービスだと実感しました。両立の面では、オフィスに滞在する時間を短縮せざるをえないことや土日に家族との時間を優先するため、平日に仕事を終わらせることが大変でした。
金融機関での経験が活かせるフィンテック領域での起業を選ばなかった理由は、政治的思惑や規制の影響を受けやすい領域で、事業成長のスピードも外部環境に影響されやすいと感じたためです。外部要因に左右されにくく、生活に直結する領域での起業を決意しました。
──お子さんにはどのような教育をされていますか?
まだ、子どもはとても小さいので、教育というほどのことはできていません。ただ、将来的に、興味関心や行動力を大切にして起業家的な考え方、行動ができるような大人になってもらいたいと思っています。
起業するということは無人島で生活していくようなもの。生きるために必要なスキルと直結した部分があると思います。何もないところから道具を作ったり、寝床や食事などの仕組みを作ったり。常に周囲を見ながら学習して、できないことをできるようにし、改善していく。それをやり続けることは起業に似ていると思います。
教科書やロールモデルがなくても、自分の頭で考え、常識に捉われずゴールを達成するための方法を思考する。これは、起業家の道を選ばなかった場合も生きていくうえで役立つスキルではないでしょうか。