国内

2023.03.13

「牛の尿」でスケールアップしたい 設備投資をCOEDOビール社長にお悩み相談

環境大善の窪之内誠社長(右)と協同商事の朝霧重治社長

朝霧:資金の投下の仕方がポイントだと思います。なんでもかんでも自前主義でいくのではなく、外部倉庫をお借りして賃貸契約でキャッシュアウトを抑えていくなど、意識して使い分けていくことが必要です。腹を据えて100年先に向けて投資するのであれば、自社物件にすることもあり得る。うまくいかなかった時に急ブレーキをかけられる要素を持たせておくことが必要ですよね。

窪之内:設備投資にも、ビジョンが大切ですね。

朝霧:やはりこの部分はすぐに利益など結果が出るものではありません。ですが、設備は自分たちの存在意義に関わることだと思います。

やるべきこと、やらなくて良いこと、やりたいことを取捨選択する。特に私たちのようなスモールカンパニーにとってはやらない選択が結構大事だと思っています。いわゆる「選択と集中」ですね。

あえてやらないことが、ビジネスチャンスを呼び寄せる 

窪之内:ちなみに御社であえてやらないことは、どんなことでしょうか。

朝霧:私たちはクラフトビールを醸造していますが、近年はあらゆる食品がクラフト化する流れがあります。例えばチョコレートやコーヒー。アルコール業界で言えば、ジン、ウイスキーにもクラフト化の潮流があります。

正直、私たちにとってウイスキーは参入しやすい事業なんです。蒸留機はそこまで高価なものではないですし、蒸留する樽も準備できる。ですが、「何屋なんですか?」と聞かれた時に私たちが全てのポートフォリオを埋める必要はない。あえてやらない選択もあるんです。



朝霧:その代わりに、クラフトウイスキーを手がけている方たちを応援しています。実際にアイルランドのウイスキーの会社ともグローバルにつながり、コラボレーションが進行中です。もし自社でウイスキーも手がけていたら、競合になってしまうのでコラボ案件は出てきませんよね。やらないことは犠牲になることばかりではないと思います。

窪之内:私たちも牛の尿を原料にしていると「牛の糞」はやらないの?と言われることもあります。ですが、こちらの分野はすでにうまく利用されていて肥料化する研究も進んでいます。一方、尿の研究事例はまだ少なく、もし有効利用ができれば地球に還元できるので社会的なインパクトも大きいです。なので、「牛の糞」はあっさり切り捨てたんです。

すると堆肥メーカーから、当社で製造している「液体たい肥 土いきかえる」を添加した堆肥を作りたいとお声がかかり、「土いきかえる堆肥」という商品が生まれ、40リットル1万体売れたんですよね。もし「牛の糞」に手を伸ばしていたら堆肥メーカーと競合するのでコラボレーションは難しかったでしょう。「牛の尿」にロマンを感じて思い切って事業の舵を切ることで、新しいビジネスチャンスも呼び寄せることができるのだと改めて思いました。

これまでのお付き合いでOEMもやっていますが、これからはきっちりとブランディングを進めて、私たちの名前を使ったり、協業する企業とダブルネームで新商品を出したり、より私たちの世界観が伝わるような手段を選べるようにしていきたいですね。
環境大善の「液体たい肥 土いきかえる」などの商品は、「ブランディング・CI/VI」部門で2022年度グッドデザイン賞を受賞した  

環境大善の「液体たい肥 土いきかえる」などの商品は、「ブランディング・CI/VI」部門で2022年度グッドデザイン賞を受賞した

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文=督あかり

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