国内

2023.03.13

「牛の尿」でスケールアップしたい 設備投資をCOEDOビール社長にお悩み相談

環境大善の窪之内誠社長(右)と協同商事の朝霧重治社長


朝霧(続き):一気に2倍、3倍も設備を整える必要はなく、例えば20%の増強投資を継続していく。そうすれば無理をせずに事業規模に合わせて拡張し続けることができるんです。おそらく御社の場合は原料の調達は問題なくできますし、出来上がったものをパッケージ化する工程も、連続で稼働させるなどの効率化を図れば、特に問題なく拡張できますよね?

窪之内:そうですね。今のところ手作業が非常に多いので、ライン充填機などを導入したり、人海戦術で人員を増やすなど、状況に応じて対応できると思います。ご指摘の通り、うちも発酵槽がありまして、そこの容量が売上の総量を握っています。先代の時から思い切った設備投資になかなか踏み出せずにいるんですよね……。

「拡張性」を担保し、スケールアップに対応する 

朝霧:発酵業はそれでよろしいと思います。まず、設備に建屋が必要なのか、屋外の発酵タンクでも大丈夫なのかを見極める必要があります。もし屋内で発酵の管理が必要ならば、建屋はある程度経済性のある簡易なつくりで、しばらくは伽藍堂のままでも構いません。そして、事業のスケールアップに合わせて徐々に建屋を発酵タンクで埋めていくなどして「拡張性」を担保できると良いですね。

窪之内:これまでは酪農家併設のプラントがメインだったんですけど、ちょうど2022年に補助金をいただいた関係もあり、自社プラントの敷地に400トンのプラントを4つ作ったんです。ただ雪が積もって冬はなかなか稼働しないので、新しく建屋を作るか氷を割ってでも稼働させるかという議論になりました。

積雪のある冬季は北海道では土壌改良材のニーズはほぼなく、売り上げもすごく下がる時期だったんです。ですが、おかげさまで本州以西のホームセンターでの需要がほぼ下がらなかったので、新しく作ったプラントを仮稼働させて対応することができました。

朝霧:良かったですね。私たちは2016年、次のフェーズに移行するために先代の工場から現在の醸造所に移転したんです。敷地が大きい用地の確保から手がけました。20〜30%の増産計画でも手一杯になると、ジャンプしなくてはいけないタイミングがやってきます。そんな時も次の世代にとって負の遺産とならないようなレベルでやっておくことが大事だと思っています。

設備投資にも「ビジョン」を 



窪之内:
醸造所を新しく移転する計画は、どのようなタイミングで出たんでしょうか。

朝霧:移転まで、5年くらいかけていますね。不動産って欲しくてもすぐに良いものが出てくるか分からないし、理想的な物件が見つかればラッキー。嗜好品みたいなものじゃないですか。うちの場合は、立地も含めてブランディングに通じるので、工業団地ではなくて雑木林や田畑などがある自然豊かな環境に工場があることを理想として物件探しをしていました。
一方、立地や周辺環境にこだわらなければ、自治体からの誘致を受けて工業用地などを活用する方法もあると思います。

窪之内:うちは本社が住宅街のど真ん中にありますが、視察に来られた方は必ず「建物の中のにおいがしない」と驚かれます。酪農家から仕入れた牛の尿100トンが常時あるのに、です。確かに場所は大事だなと思いました。

今春、新たなプラントが本格稼働し、さらに需要も伸びていくことが予想される一方で、今後は資材庫をどうするかという問題もあります。市場に求められていくにつれて、設備投資の規模もビビってしまうステージになっていき、葛藤があります。
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文=督あかり

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