より広くいえば、企業内に党委を設置する動きは、中国政府による戦略の一環である可能性がある。その戦略とは、筆者が呼ぶところの「潜伏させた兵器化(latent weaponization)」戦略だ。中国は繰り返し、政治的・経済的・地政学的には穏便に振る舞いながら、それらの動きを組み合わせて、敵対する国々に対する強力な支配力になりうる手段を構築・拡大する動きを見せている。
2019年には、全米プロバスケットボール協会(NBA)に所属する「ヒューストン・ロケッツ」のゼネラルマネージャーがTwitter(ツイッター)に、香港の抗議デモを支持するメッセージを投稿。これを受けて、NBAの公式パートナーだった中国企業11社が提携を打ち切り、NBAに多額の損害を与えた。例えば金融企業の株主が、中国における人権侵害問題に懸念を示した場合、中国から報復や非難を受ける可能性があり、顧客がリスクに直面する可能性がある。企業が中国共産党を優先し、株主を二の次にせざるを得なくなる日がやってくるかもしれない。
西側の企業は、どの程度までなら、中国共産党の政治的アジェンダや軍事的な野望を支持し、自社の従業員や顧客をその影響にさらすつもりがあるのか、決断しなくてはならない。米国資本主義の旗手ともいうべき企業の経営組織内部に党委を設置したことが判明するだけでも、多くの企業にとってはイメージダウンにつながりうる。一部の株主や顧客は、中国共産党による人権侵害や、地政学的な面での攻撃的な姿勢と企業が結びつく状態について尻込みするだろう。
中国は、台湾の再統一を明言しており、建国100年目、そして習近平国家主席が掲げる「チャイニーズ・ドリーム(2049年までに完全に発展・繁栄した国になるという長期目標)」の達成期限である2049年までの実現を目指すかもしれない。中国が経済的な支配力を利用して地政学的アジェンダを推進しようとしていることを考えれば、グローバルな金融機関やその従業員、顧客、そして世界経済にとって、チャイニーズ・ドリームは悪夢と化す可能性もある。
(forbes.com 原文)