政治

2023.03.10

中国共産党、欧米企業の従業員にも支持表明を要求

Getty Images

中国の企業内に設置された党委の役割は、懸念を生む可能性があるものだ。従業員が党の要求に応じなかったり、職場内で政治的緊張が生じたりした場合には、日常業務の障害が生じる可能性もある。香港立法会の元議員であるデニス・クォック(郭栄鏗)によると、香港では、党員バッジの着用に限らず、企業に対する中国共産党の影響力が強まっているという。香港の場合、企業の社内に設置された党委は、まずは状況を観察して情報収集することから始めたが、やがて取締役会の決定に影響を与えたり、取締役を任命したり、経営に対して指示を行うまでになった。中国企業のなかには、定款を変更して、取締役会が重要な決断を下す際には、初めに社内の主要な党組織に意見を求めることを明記したところもある。

より広くいえば、企業内に党委を設置する動きは、中国政府による戦略の一環である可能性がある。その戦略とは、筆者が呼ぶところの「潜伏させた兵器化(latent weaponization)」戦略だ。中国は繰り返し、政治的・経済的・地政学的には穏便に振る舞いながら、それらの動きを組み合わせて、敵対する国々に対する強力な支配力になりうる手段を構築・拡大する動きを見せている。

2019年には、全米プロバスケットボール協会(NBA)に所属する「ヒューストン・ロケッツ」のゼネラルマネージャーがTwitter(ツイッター)に、香港の抗議デモを支持するメッセージを投稿。これを受けて、NBAの公式パートナーだった中国企業11社が提携を打ち切り、NBAに多額の損害を与えた。例えば金融企業の株主が、中国における人権侵害問題に懸念を示した場合、中国から報復や非難を受ける可能性があり、顧客がリスクに直面する可能性がある。企業が中国共産党を優先し、株主を二の次にせざるを得なくなる日がやってくるかもしれない。

西側の企業は、どの程度までなら、中国共産党の政治的アジェンダや軍事的な野望を支持し、自社の従業員や顧客をその影響にさらすつもりがあるのか、決断しなくてはならない。米国資本主義の旗手ともいうべき企業の経営組織内部に党委を設置したことが判明するだけでも、多くの企業にとってはイメージダウンにつながりうる。一部の株主や顧客は、中国共産党による人権侵害や、地政学的な面での攻撃的な姿勢と企業が結びつく状態について尻込みするだろう。

中国は、台湾の再統一を明言しており、建国100年目、そして習近平国家主席が掲げる「チャイニーズ・ドリーム(2049年までに完全に発展・繁栄した国になるという長期目標)」の達成期限である2049年までの実現を目指すかもしれない。中国が経済的な支配力を利用して地政学的アジェンダを推進しようとしていることを考えれば、グローバルな金融機関やその従業員、顧客、そして世界経済にとって、チャイニーズ・ドリームは悪夢と化す可能性もある。

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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