宇宙

2023.03.10

宇宙に「重力」をつくる 鹿島建設 x 京大が挑む未来の宇宙建築とは

月の人工重力施設「ルナグラス」

──ここからプロジェクトを加速させるために、ハードルとなっていることはありますか?

ひとつは宇宙における放射線の遮断方法で、これは京大がシュミレーションしています。あとは、地球でこの重力装置を体験できる施設をつくるのが大きなミッションですね。

まずはアミューズメントのような楽しく体験できる施設からスタートして、宇宙での暮らしを実現できる可能性がある、と伝えていき共感やリソースを集めていきたいです。

そのためにはパートナーが必要です。社外はもちろん、鹿島建設の社内にも求めています。せっかく施工の技術やノウハウを膨大に持っているのに、宇宙建築の研究をする人が社内にあまりいなくて。

やはり会社としてスピード感を持って事業を動かしていくためには、地球上で再現できて、3〜5年、最長でも10年でフィードバックが返ってくるような採算計画を立てる必要があります。

──今日のお話を聞いていて、重力の強弱を人工的にコントロールするという技術は地球上においても応用の可能性がありそうだなと感じました。今後のアクションとして想定されていることはありますか?

先ほどのドラゴンボールの話ではないですが、重力の負荷をかけることでスポーツのトレーニングに活用するというのはひとつのアイデアだと思います。また、低重力で骨が脆くなってしまうという問題の逆の発想で、老化防止やリハビリなど医療分野の応用は考えられますね。少し飛躍しますが、重力を活かした新感覚の演劇やアートなど、クリエイティブ方面の活用も考えられるのではないかと妄想しています。

分断のない人類の宇宙進出という大きなビジョンのもと、まずは地球でそれを伝えることができる体験をつくっていければと思います。社内外問わず、発信とディスカッションをしていきたいですね。


大野 琢也◎1991年神戸大学工学部建築学科卒業。1993年神戸大学大学院工学研究科建築学専攻修士。1993年鹿島建設入社、設計・エンジニアリング総事業本部。1997年より関西支店建築設計部。2020年より京都大学大学院総合生存学館非常勤講師。2022年より鹿島建設技術研究所兼務。子供のころより宇宙居住に興味持ち、基礎として建築設計を学ぶ。宇宙居住の問題点は、低重力により地球に戻れない体になること、誕生や成長が正常に行われないこと、であると考え、その対策として遠心力を利用した人工重力施設が役に立つかもしれないと思い、仕事とは別に研究を重ねてきた。書籍、雑誌、講演などで独自の人工重力施設の建築的手法を世に問いかけている。

鹿島建設
鹿島は、1840年の創業から現在に至るまで、人々が安全・安心で快適に暮らすことができる社会をめざし、建設事業を通じて産業・経済の発展に貢献してきた。国内外で建設・開発に関わる事業を展開しており、企画・開発から設計・エンジニアリング、施工、建物竣工後の運営・管理、維持・修繕に至るまで、全てのフェーズにおいて高度な技術を活かし、グローバルな視野で持続可能な社会の実現を目指している。

文=松岡真吾

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