北海道の若者向け人気番組「イマリアル」が指し示すラジオの未来

「『若者のラジオ離れ』という指摘があるが、それは正確な表現ではない」と森本は主張する。「離れたのではなく、そもそも接触していないのだから、まずはこちらから出向いてラジオを聴いてもらう」のだと言う。学校へ行く際には必ず、専用のラジオ受信機を持参。生徒1人ひとりに手渡すと、歓声が上がるという。

ただ、北の大地も少子高齢化と無縁ではない。北海道の住民基本台帳によると、2022年1月1日時点の24歳以下の人口は約99万人で10年前から16万人あまりも減少した。2020年の合計特殊出生率も1.21と都道府県で東京、宮城に次ぐ低水準だ(総務省「人口動態統計」)。となれば、若年層リスナーの掘り起こしもやがては限界を迎えるかもしれない。

「リアタイ(=リアルタイム)勢もタイムフリーで聴いている人も楽しんでいってください」と、番組の途中で森本はリスナーに呼び掛ける。タイムフリーはアプリケーションの「radiko(ラジコ)」が提供する聴き逃し配信サービス。森本がネット経由のリスナーを念頭に置いているのは明らかだ。

前出の総務省の報告書によると、2021年度の「radiko」の利用率は15.7%に達し、2022年のサッカーW杯の全試合配信で話題を集めた「ABEMA」にほぼ肩を並べる。番組に届くメールの半分以上は地上波だとカバーできない北海道以外の地域のリスナーから送られてくる。

森本は「全国ネットしてください、というぐらいの気持ちで番組に臨んでいる」と意気軒昂だ。彼の発信するメッセージは津軽海峡を超えた地域に住む若者たちの心も揺さぶる。(文中敬称略)

文=松崎泰弘

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