経済

2023.03.05

対ロシア制裁がほとんど成果を生んでいない理由

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また、対ロシア制裁が実行されても、ロシアの主要な貿易品目である原油の輸出は止められていない。原油生産量は、ウクライナ侵攻前と比べると若干減っているが、それでも、1日当たり1000万バレルを超えている。

ロシアがくみ上げている原油は間違いなく、中国などに輸出されている。ロシア経済の規模を考えると、自力で1日1000万バレルもの原油を消費できるとは考えにくい。

制裁を科しても効果がないことは、歴史を振り返ってみても明らかだ。米国は60年にわたって対キューバ制裁を実施してきたが、キューバ側の態度に変化があったわけではない。

イランもまたしかりで、神権政治が始まってからずっと制裁を受け続けているのに、効果はない。それどころか、イスラム革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」をさまざまな国に送り込み、シリアやイラクなど各地で問題を起こしていると報じられている。

では、対ロシア制裁に全くメリットがないのかと言えば、おそらくそうではない。

最も広い意味で見れば、制裁とは、それを科す側の国を率いる政治家たちが、自国民に対して「美徳シグナリング(善行を公の場で見せつける行為)」を行うひとつの方法だ。簡単に言えば、「ロシアが引き起こした惨状はおぞましいものであるため、罰を与える」というメッセージを発しているのだ。

制裁の目的が単にこれであれば、効果があると言えるだろう。しかし、ロシア政府に不当で無益な戦争をやめさせることに関しては、ほとんど成果を生んでいない。

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ・編集=遠藤宗生

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