日本酒の枠を広げる「泡」と「ヴィンテージ」の可能性

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中道:僕も日本酒は大好きですが、海外では買えないイメージがあって、選択肢に入りにくいと感じています。ワインのような世界規模のソリューションにしていくには、オールジャパンで問題意識を共有して、いろんな人を巻き込みながらやるべきだと思うんですが、そういうアクションはあるんですか?

永井:まだそれぞれが個々で勝負している状態なので、みんな壁にぶち当たっています。インポーターとディストリビューションとの関係とか、物流やサプライチェーンとか。これに関しては正直なところ国に入ってきてもらいたいんです。

そのためには業界全体で働きかけながら小さな成功を示す必要があるので、AWA SAKE協会としても売上を伸ばす努力をしています。

一般的に4合瓶の日本酒の平均単価は1本1000円ぐらいですが、おかげさまで、スパークリング日本酒の平均単価は1本5000円と一般的な日本酒の5倍ぐらいにはなりました。売上も、AWA SAKE協会をスタートした当時は年間2万〜3万本でしたが、今は15万本ぐらいになりました。

でも、日本はシャンパンを年間1500万本も輸入しているんです。ですからまずは日本人にスパークリング日本酒をおもてなしの酒として飲んでいただけるようにしなければいけない。それと並行して世界にも攻めていくつもりです。

(C)永井酒造

(C)永井酒造


もうひとつ、今年で28年目になりますが、ヴィンテージの研究もしています。日本酒は新酒を好むので、始める時は社内で反対されまくりましたが。かつて感動したモンラッシェの1988年は、また飲みたいと思っても毎年少なくなっている。そういう世界観を日本酒にもつくりたいなと思っています。

そこで、2020年にヴィンテージの日本酒協会「刻(とき)SAKE協会」を立ち上げました。7つの酒蔵が会員で、ソムリエの田崎真也さんとサントリーの名誉チーフブレンダーの輿水精一さんに顧問になっていただいています。

同年に、「刻の調べ 熟成酒8本セット」を202万円で販売。コロナ禍だったので世界には発表しませんでしたが、限定20セットが3週間ほどで売り切れました。その次は2022年で、興水さんが4社のヴィンテージ日本酒をブレンドして、ウイスキーの山崎の樽とそうでない樽で熟成させ、違いを比較できる4本セットを発売。80万円で120セットを販売し、売り切れました。

今年は1月に初めて、刻SAKE認定酒として会員企業の7社が特別ヴィンテージを1本ずつ発表。これをスタートとして、日本酒のプリムール(新種)じゃないですけど、先買いをしたものが10年後に価値が上がり日本酒が資産になるような世界を作っていきたいと思っています。そのためには在庫管理方法などの基準を明確化した仕組みが必要です。
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文=久野照美 編集=鈴木 奈央

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