「芝を刈るヒツジ」が都市景観とメンタルヘルスに与える劇的な効果

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学生たちも同意見だ。

「化学の中間試験直前にヒツジたちを見るのが大好きでした」、とInstagram(インスタグラム)のアンケートにある学生が書いた。「試験前に気を紛らわせ、ストレスを和らげるのに役立ちました」

「忙しい一日の最中、一息ついてぼんやりとヒツジの群れを見ることは、多くの人たちに喜びをもたらします」と、プロジェクトの研究アシスタントで、環境科学を学ぶ学部4年生のミナ・ベドグネは述べている。「草を食べているところを見るのがとても癒しになるからと、そこでランチを食べたり仕事をしたり友だちと話したりする学生もいます」

ヒツジたちは学生に孤独感を和らげるきっかけを与える。孤独は新型コロナウイルスによるロックダウンの影響もあり、ますます深刻になっている問題だ。たとえば、American College Health Associationが最近実施した調査によると、女子学生の67%、男子学生の54%が、過去1年間に「とても孤独だ」と感じたことがあると答えたという。

「孤独は本学の多くの学生にとって大きな問題です」と共著者で心理・行動科学科教授のキャロリン・デワは同意する。「確かな研究結果のひとつは、ソーシャルサポートはメンタルヘルスの保護要因であるということです。芝刈りヒツジがメンタルヘルスの改善に役立つ理由の1つは、共有体験の機会を提供することです」

「一連の事象は、人々に自分は大きな集団の一員であると認識させ、コミュニティ感覚を与える役割を果たします」とデワは言った。


「これは本当に賢いプロジェクトだと思います」、とある学生がデービス校の学内新聞、The Aggieに話し、ヒツジは「安い労働力」だと付け加えた。

実は、たくさんの人間と昔ながらの芝刈り機を使う代わりに、ヒツジ(あるいはヤギ)を使って緑地を維持し、火災を予防することは新しい考え方ではない。すでにブドウ園や果樹園では、ヒツジとヤギを使って、収穫後のつるや木々の間に生えた雑草を食べさせている。動物たちはソーラーパネルの周囲、川や幹線道路沿い、公共緑地、急な斜面などにも草を食べる機会を見つけ始めている。


ソーラーパネルの周囲で草を食べるヒツジたち(Antalexion / CC BY-SA 4.0)

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翻訳=高橋信夫

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