壁画に込められた思い
バンクシーは昨年後半のウクライナでのレジデンシ―の間に、キーウのほかホストメリ、イルピンなどいくつかの都市で、戦争に関連のある壁画を制作した。そして、戦闘が続くウクライナに滞在していることを自ら認めるように、ボロジャンカに残した柔道着の少年と投げ飛ばされる男性の壁画を撮影し、SNSに投稿した。
暗い戦時下のウクライナの都市に広がる地獄のような光景は、アーティストとしての彼に、その容赦ない風刺のセンスを発揮する数多くの機会を与えている。
怒り、皮肉、寒々しさを順番に、そして一貫して政治色を作品に表してきたバンクシーは、まだこの紛争地域でのレジデンシ―を完全に終えたわけではないだろう。おそらくまた、ウクライナのどこかに「姿を現す」と考えられる。
バンクシーがこれまでにウクライナで制作した作品には、彼とその作品を追い、学んできた人たちにとって、驚くべき点がある。一連の壁画は、(彼の作品にしては)驚くほど「暗くない」のだ。ユーモアが感じられる──おそらく作品を見るウクライナの人々を、支援したい気持ちの表れなのだろう。
戦禍に見舞われる都市に描かれたこれらの壁画からは、暗く、同時に気骨を感じさせるバンクシーの作風のなかに、注意深く表された小さな、非常に繊細な「希望の触手」を見て取ることができる。
(forbes.com 原文)