筆者である夏目萌は、これまでAI企業でのリアルを書いてきたが、2021年にフェムテックを提供するヘルスケアスタートアップのリンケージ取締役COO/CSOに就いた。
今回からは、このヘルスケアスタートアップの経営や女性として体験しているハードシングス、立場や問題意識について語っていく。
経営陣の仕事は努力量や時間に比例しない
リンケージでは、クライアント企業の女性従業員の健康支援を行うサービス「FEMCLE(フェムクル)」を提供しています。そのなかでも私は、戦略設計から事業実行までのプロセスを担っています。経営陣とは結果責任をともなう役職であり、努力量や時間と比例するものではありません。そこに性差はないため、女性の私がこういう職種に就くことで、周囲の女性にポジティブな影響を与えられたらいいなという気持ちで就任しました。
ヘルスケアの分野には、数年前から興味を抱いていました。リンケージ入社の直接的なきっかけは、身近な人のメンタルヘルスの疾患です。
既存のサービスを使ってみたり、自分なりに勉強したりしましたが、当時は適切な相談がリーズナブルに受けられるサービスはまだ少ない状況でした。また、一度疾患を抱えると回復するまでに時間を要するケースが少なくないと実感し、予防の段階で気づくことができる世の中になったらいいなという思いが生まれました。
女性の働きづらさを「企業として解消する」には
リンケージではさまざまなサービスを提供していますが、個人として最も意識的に取り組んでいるのは、女性の健康支援の領域です。女性活躍推進が進んでいる今日ですが、実は特有の健康課題によって、離職や昇進辞退をする人がいまだ非常に多い状況です。
男女ともに、不定期に健康上の理由で、自分のパフォーマンスが落ちてしまうことはあるでしょう。しかし、女性は妊娠・出産に加え、更年期など、健康課題を抱える期間が長く自分の最大限の力が発揮できないことがネックとなり、管理職への不安に繋がる人が多くいます。
マネジメントの立場からしても、いつどのようにメンバーの管理職への登用を設計するかは非常に悩ましいと感じています。
実は、私自身も出産に伴い1月末から産休を取得中です。また、管理職を含めたメンバーが2人同時期に産休育休に入るという状況で、嬉しくもありつつ、つい先日まで急ピッチで体制づくりをしていました。
私自身、出産と仕事の両立については、妊活時から悩みが少なからずありました。しかし女性活躍を支援するサービスを提供する以上、自身で乗り越えていくべきテーマだと覚悟を決めていました。ただ実際に妊娠してみてやはり、経営者や管理職は結果を求められるため、時に時間をかけてコミットする必要もあり、妊娠や出産で時間が制限されることに難しさを覚える部分もありました。