かといって、「発展途上国はかわいそう」と上から目線で寄付をするのは大間違い。善意が思い通りのかたちになるなんて甘いもんじゃない。善意に酔っていると、「裏切られた!」と怒ることになる。
コンテナに洋服を詰め込んでベナンに送ったことがあったけど、港の陸揚げを欧州の業者が独占していて、手数料をがっぽり取られたことがあった。中間搾取の構造があるんだ。ゾマホンのために、賞金1000万円のクイズ番組に俺が2回出演したことがあって、1回は優勝したんだ。賞金をゾマホンのところに送ったら、途中で手数料だの経費だの取られて、その挙げ句、盗まれたって。
北野:学校をつくったときは所ジョージが協力してくれて、大型バスを3台送ってくれたんだ。そしたら、政府が使ってるって(笑)。でも、それも当然の話で、学校をつくっても道路がないから。
学校で勉強を教えるといっても、10kmも離れたところから歩かなくちゃいけないから子どもたちは働いていたほうがいいという発想になる。そこでおいらがやったのが給食サービス。「学校に行ったら、ご飯が食える」と言うと、子どもたちが集まるでしょ。芸能界のタレントたちにもお金を出してもらい、ご飯が食えて、勉強できて、資格が取れるようにしたら、これは細々と続いている。
北野:いちばん大事なのは自分たちで食うすべをつくること。安い労働力を使うために日本から仕事を発注しても、それでは経済構造は変わらないよね。仕組みとルールをつくって、ルールがわかる人間を育てなきゃ。それは時間がかかる。
きたの・たけし◎1947年、東京都足立区生まれ。明治大学工学部名誉卒業。72年、漫才コンビ・ツービートを結成、芸人ビートたけしが誕生。漫才ブームをけん引し、数々の冠番組をもつ国民的タレントに。83年、大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』で俳優として注目を集め、89年『その男、凶暴につき』で映画監督デビュー。97年、 監督・ 脚本を務めた『HANA-BI』でベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞。2010年に仏パリのカルティエで絵画の個展を開催し大反響を呼ぶなど、画家としての評価も高い。近著に恋愛小説『アナログ』、私小説『浅草迄』、歴史小説『首』など。