俺はゾマホンに「アフリカから呼んだ目的と違うじゃないか。帰れって言え」と言ったんだ。 泣く泣く彼らは牛を連れて帰国したんだけど、事業になってないという。理由を聞いたら、牛を食べちゃったんだよ(笑)。「何やってんだよ!」と言うと、「いえ、何頭か残してあります」という。でも、残したのは全部雄牛。「オスだけ残したってしょうがねえだろ!」って。現地でゾマホンが注意したらしく、何とか事業を始めたと言っていたよ。
長い目で見て仕組みをつくるより、目先のお金や食い物に飛びつくのは、人間だから仕方がないんだけどさ。
そのころ、ボクシングのフロイド・メイウェザーが現役で、ギャラを聞いたらすごくて(※1試合の賞金と放映収入で約30億円以上)、ゾマホンに「ベナンでいちばん足が速いやつを連れてこい」って言ったんだ。身体能力が高いのを日本のジムで鍛えて、ボクサーにしようと思ってね。「稼いだカネでベナンに留学制度をつくって、全員日本の医学部に入れて、ベナンで診療所をやらせよう。診療所と薬は俺が用意するから」って。
ところがさ、「強い男がいる」って連れてきた男が、「殴り合いは嫌いです」と言い出した。慌てたゾマホンが、「私がやります」って言うんだけど、「お前は、年だからダメだよ」となっちゃった。
映画やテレビの激務の合間に支援を続けて約20年後の2018年、たけし日本語学校に、ゾマホンがひとりの日本人を連れてきた。この男がたけし日本語学校で目にした「あるもの」をきっかけに、新たな物語が生まれ、活動は大きな事業へとつながっていく──。
後編は、本日発売の『Forbes JAPAN』4月号にてお読みいただけます。
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