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2023.03.07

「牛の尿」から消臭剤を製造。地域の問題を解決へ導いたローカルヒーロー|環境大善

環境大善代表取締役社長の窪之内誠

Forbes JAPAN 2023年4月号』では、規模は小さいけれど偉大な企業「スモール・ジャイアンツ」を特集する。「スモール・ジャイアンツ」は、Forbes JAPANが2018年から続けてきた名物企画で、会社の規模は小さくても世界を変える可能性を秘めた企業をアワードというかたちで発掘し、応援するプロジェクトだ。

今回「ローカルヒーロー賞」を受賞したのが、北海道北見市の環境大善。畜産廃棄物だった牛の尿を原料に、100%自然成分の消臭液や液体堆肥を製造。発酵を武器に地域の問題を解決する環境大善の取り組みとは?


「牛の尿にワクワクする。牛の尿にロマンを感じる。そう言って会社に入ってきてくれる人が増えるのって、ちょっとヤバいと思いませんか?」

環境大善の代表取締役社長である窪之内誠は、発酵に魅せられた社員たちが入社してきた際のエピソードをうれしそうに語る。

同社の主力商品の原料は、酪農家やJAから買い取った「牛の尿」だ。これまで牛飼いにとって産業廃棄物でしかなかった牛の尿は、独自の発酵技術によって無害化され、人にも動物にも環境にも優しい液体に生まれ変わる。

窪之内はこの液体を「善玉活性水」と名付け、消臭液や土壌改良材として製造・販売している。

この液体を排水口や生ゴミ、ペットのトイレなどに吹きかけると、嫌な腐敗臭やアンモニア臭がしなくなる。土にまくと植物の生育がよくなる。前人未到のアップサイクルだといっていい。

2006年創業の同社は北海道北見市に本社を置く社員21人の小さな会社だ。もともとは地元のホームセンターに勤めていた父(現会長・窪之内覚)が、事業のひとつとして担当していた消臭液の権利を退職金代わりに譲り受けたことが原点になっている。

北見市は酪農が盛んな地域で、家畜のふん尿処理の問題が発生する。牛は1頭あたり1日に10〜20Lもの尿を出す。牛ふんは堆肥などに利用されてきたが、尿は水質汚染や土壌汚染、悪臭などの要因になるため、そのまま環境中に放出することはできなかった。

牛の尿の発酵液を熟成させるためのプール。中を覗くと、茶褐色の大量の液体が空気の泡をポコポコと出しながら攪拌されていた。このあと、企業秘密である最終工程を経て製品完成となる。

牛の尿の発酵液を熟成させるためのプール。中を覗くと、茶褐色の大量の液体が空気の泡をポコポコと出しながら攪拌されていた。このあと、企業秘密である最終工程を経て製品完成となる。


そのため酪農家は牛の尿を牛舎の近くに保管し、乳酸菌などの微生物で無害化してから川に排出していた。そこに独自の発酵技術を生かして無臭の液体に変える取り組みは、地元の悩みを解決するものだ。
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文=畠山理仁 写真=小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN 特集◎スモール・ジャイアンツ/日本発ディープテック50社」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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