北見市は1年の半分が雪に埋まるため、園芸商品は季節もので商品化が難しい。ところが牛の尿からできた液体を覚が嗅いでみたところ、まったく臭くなかった。
つねづね顧客から「ペットのトイレの臭いが消える消臭液はないか」との要望を受けていた覚は「牛の尿の臭いが消えるなら、消臭液として使えるのでは?」とひらめいたのだ。
「父が試しに排水口や生ゴミ、ペットのトイレにかけたところ、てきめんに嫌な臭いが消えたんです。さっそく安全性試験をして商品化したところ、介護やペットで臭いの悩みを抱えていた人たちにとてもよく売れました。やがて道内だけでなく全国へも売るようになったんです」
2006年、消臭液事業に可能性を感じていた覚はホームセンターを定年退職する際、会社から同事業の権利を譲り受けた。その代わり、退職金はゼロ。家族には内緒で融資を受け、会社を登記した。社員は社長の覚とかつての同僚2人の3人だった。
「父は私の妹の入学資金として借りた学費まで事業に突っ込むほど入れ込んでいました。それを知った家族は激怒しました(笑)。しかも、扱っているのは牛の尿が原料の消臭液ですから。メディアは面白がって取り上げてくれましたが、『なぜ臭いが消えるのか』を説明するエビデンスに乏しかった。周りからは『お前のオヤジ、大丈夫か?』とバカにされたので、家族は父の事業に嫌悪感でいっぱいでした」
共同研究とリブランディング
父親である覚が環境大善を創業した当時、のちに2代目社長となる誠は北見市内のOA機器販売会社で営業職をしていた。会社では営業責任者を任されるまでになり、自身の仕事にやりがいを感じていたため、事業継承はまったく考えていなかった。