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2023.02.24

メタバースへの期待が空回りしないために日本IBMが提言

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メタバースに対する市場への期待は、急速に膨らんでおり、2030年までに8兆~13兆ドルに達すると金融大手のシティグループは予測しています。実際、海外だけでなく日本でもメタバース市場へ次々に参入するサービス事業者は増加しており、今後競争の激化も予想されています。

一方、個人消費者の立場でメタバース市場を見たとき、どのような捉え方をしているのでしょう。日本アイ・ビー・エムが個人消費者を対象にした「メタバースWebアンケート調査」を2022年9月に実施し、その結果がレポートとして発表されています。

まず、AR(現実世界へデジタル情報を付加する技術)、MR(現実世界とデジタル仮想空間を相互に影響させる技術)、VR(デジタル仮想空間を現実世界であるかのように疑似体験する技術)といったメタバースを構成する技術に対して、体験の有無と理解について聞いたところ、「体験したことがあり、どんなものか理解している」と回答したのは、わずか3.2%でした。VRに対しては、半数近くが体験もしくは理解しているものの、AR/MRは20%も満たしていません。

VRは、ゲーム用としても普及しており個人消費者でも入手しやすいですが、AR/MRは、まだ企業や実験ベースが多く、なかなか触れる機会が少ないことも影響していると思います。

続いて、ユーザーの課題やニーズに応えるために、メタバースがどのように広がり、役割を果たすのかを考察しています。1つ目が「コミュニケーション」。4つのコミュニケーション手段に対する個人の不満や困りごとについて、以下のような結果となっています。

4つの手段において、いずれも上位にランクインしているのが、「伝えたいことがうまく表現できない」と「扱える情報の種類が限られている」です。このことは、相手に情報を伝えきれないもどかしさを感じているからだとし、それを補完する技術がメタバースにはあるとしています。それはアバターであり、AR/MRによる情報の補完、VR空間で人間の五感に訴える機器による情報伝達が有力だとしています。

2つ目が、メタバース・サービス体験者の満足レベル。8つのサービスで体験したことのなる回答者の満足レベルを集計したところ、「とても良かった」「まあまあ良かった」の合計割合は、イベント、ショッピング、ゲームの順でした。では、満足度を左右するのは「コンテンツ」なのか「機器」なのか重要視した要因を集計したところ、満足度レベルの高かった上位3つは、いずれもコンテンツを重要視していました。ただ、感光教育、医療/治療では、「コンテンツの操作性」を重要視しており、利用する分野によってサービス事業者は満足度を高める工夫が必要だということがわかります。


3つ目が、メタバース・サービスに期待する機器や機能19項目について、魅力的かどうか問うたところ、「とても魅力的だと思う」と回答した人が多かったのが、道順を現実世界に重ねて表示するナビゲーション機能で20.5%でした。これは、いちばん実感しやすく、個人でも利用しやすいサービスなので、期待度も高いと思います。

また、今後メタバース・サービスで利用した機器として、年代別に集計したところ、やはり「スマートフォン」が最も多く、続いて「ゴーグル/眼鏡型機器」となりました。ただ、10代の人たちは、「コンタクトレンズ型機器」や「脳に直接へ映像を送る機器」といった、近未来技術にも興味が高く、メタバース市場をすんなり受け入れやすいのではと推察できます。

こうした結果を踏まえてサービス事業者は、用途に応じた機器の洗練化を進め、コンテンツの質を高めるだけでなく、現実世界をより便利にするにはどうすべきかを追究していってほしいものです。

出典:日本アイ・ビー・エム「過剰な期待に沸くメタバース市場、その先にある真のポテンシャルとは?」より

文=飯島範久

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