NBAを「ビジネスライクなスポーツ」に変えたキーマンと日本戦略

ロサンゼルス・レイカーズの八村塁選手とブルックリン・ネッツの渡邊雄太選手(Photo by Sarah Stier/Getty Images)

先週末、NFLのスーパーボウルで盛り上がったばかりの全米のスポーツファンは、今週再び、熱狂に包まれる。

「NBAオールスター2023」が17日から19日(日本時間18日から20日)、ユタ州ソルトレイクシティのビビント・アリーナで開催されている。

NBAの人気は日本でもよく知られるところだが、特に今季は、絶好調が続くブルックリン・ネッツの渡邊雄太選手と先月名門ロサンゼルス・レイカーズに電撃移籍したばかりの八村塁選手の活躍が、かつてないほどの注目を浴びている。

NBAにとって、世界有数のスポーツ市場である日本攻略は長年の目標であり、日本人プレイヤーが主要チームで活躍することはビジネス面でも大きな意味をもつ──。

米国のメジャープロスポーツ団体は、NBAほか、NFL、MLB、NHL(ホッケー)、そしてMLS(サッカー)など、全てが巨大な営利組織である。

オーナーと選手の双方に最大の利益を齎すべく、最高責任者であるコミッショナーのもと、労使協定、放映権交渉、競技の規則と運営管理、スポンサー獲得、マーチャンダイジング・ライセンス販売、NFTやメタバースを含むデジタル戦略構築、国際市場開拓などを、多くの専門職員が遂行している。

中でも「最もビジネスライク」と称されるのがNBAであり、その土壌は1984年から2014年の30年間に渡り4代目コミッショナーを務めた、デビッド・スターンによって確立された。

4代目は商才に長けた弁護士 イメージ低迷・財政難から人気爆発、海外進出へ

外部の顧問弁護士から78年に法務部長としてNBA入りしたスターンは、類稀なる交渉能力と企画力で、NBAを飛躍させた。

80年代、全選手を対象とした薬物テストの実施と陽性者への出場停止罰則の強化を選手会に容認させるとともに、治療支援も手掛けて、「違法薬物の徹底排除」を断行したり、チームの選手年俸総額の上限を定める「サラリーキャップ」を、他のメジャースポーツに先駆けて本格導入するなど、リーグ全体の人気低迷に関わる問題の解決に取り組んだ。

また、NBAの収益配分をオーナー側43%・選手側57%とすることを、渋るオーナー会議に受け入れさせ、後に50%ずつとなるものの、労使関係の安定に尽力した。
4代目NBAコミッショナーのデビッド・スターン氏とマジック・ジョンソン氏(Photo by Bettmann/Getty Images)

4代目NBAコミッショナーのデビッド・スターン氏とマジック・ジョンソン氏(Photo by Bettmann/Getty Images)

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文=北谷賢司 編集=宇藤智子

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