経済

2023.02.14 09:30

経済回復で米国でのアジア企業IPOが増加の見込み、コロナ前超えか

Getty Images

新型コロナウイルス感染症が世界中の人の動きとビジネスを根底から覆す前年の2019年に、アジア太平洋地域の企業33社がNASDAQ(ナスダック)に上場した。5社を除くすべてが中国企業で、世界第2位の経済大国としての存在感とそのハイテク部門の強さをはっきりと示した。展開する主要事業を長年にわたってナスダックに上場させている中国のテック分野の富豪には検索エンジンBaidu(バイドゥ)の会長ロビン・リー(李彦宏)やECサイトJD.com(JDドットコム)のリチャード・リューなどがいる。

2023年は、新型コロナからの世界経済の回復をアジアがリードしているため、この地域の企業の上場件数はコロナ前を上回るかもしれないとナスダック副会長のロバート・マックーイ・ジュニアはZoomでのインタビューで語った。上場を目指すアジア太平洋地域の企業が米証券取引委員会(SEC)に提出した94件の上場申請書類「F-1」に言及し「当社のパイプラインは極めて活発だ」と述べた。

しかし2019年に先頭を行っていた中国の企業や起業家は今年、他のアジア諸国の企業と勢いをを共有しなければならないかもしれないとマックーイは話した。何社が上場を果たせるかは断言できないが、F-1提出企業のうち中国企業者は約半数にすぎないとマックーイは指摘した。

「3〜5年前であれば80%は中国企業で、シンガポール、韓国、日本などアジアの他の地域の企業はごく少数だった」とマックーイは述べた。「50%が中国企業という事実はすばらしいが、過去数年の間に市場がどのように変化したかを如実に示していると思う」とマックーイは話した。「我々は中国を含む広い範囲を視野に入れているが、アジア(全体)にも目を向けている」

ナスダックはほぼ米国企業のための存在であり、そこで取引される4000社の約80%が米企業だ。だが残りの20%、つまり約800社は外国企業となる。大企業の中には中国のJD.comやTrip.comなどがある。昨年のパンデミックの最中でも、ナスダックには外国企業計48社が上場し(特別買収目的会社のIPOを含む)、そのうち30社がアジア太平洋地域の企業だった。2022年の大型上場としては、バッテリー交換プラットフォームを運営する台湾のスクーターメーカーGogoro(ゴゴロ)や、中国本土のホテルチェーンAtour Lifestyle Holdings(アトゥール・ライフスタイル・ホールディングス)などが挙げられる。

ナスダックで15年のキャリアを持ち、現在アジアと中南米のIPOを監督しているマックーイは、パンデミック時の渡航制限の影響などで外国企業の上場待ちが今年もまだ残っていると指摘する。昨年12月には、中国企業の新規上場をほぼ停止させる要因となっていた中国上場企業の監査について米国の規制当局が合意に達したと発表し、中国企業の米上場廃止の懸念がなくなった。
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翻訳=溝口慈子

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