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2023.02.13

米国最古のチーズ専門店が閉店へ、コロナ禍で家賃払えず130年の歴史に幕

ニューヨーク・マンハッタンのリトル・イタリーで開かれたサン・ジェナーロ祭で、老舗チーズ専門店アレバ・デイリーの屋台を訪れた俳優トニー・ダンザ(中央)と経営者のチャチャ、カレン・キング夫妻。(Getty Images)

2つの世界大戦、9.11同時多発テロ事件、世界金融危機を乗り越え、芸能界にも多くの常連客を抱えるニューヨークの老舗店が、その歴史に幕を下ろそうとしている。Alleva Dairy(アレバ・デイリー)はマンハッタンで最も古く、全米でも最古とされるチーズ専門店だが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響と約8000万円の家賃請求には勝てなかった。

マンハッタンの小売市場には寒風が吹きすさび、空き店舗がなかなか埋まらない状況だ。有名なリトル・イタリー地区のマルベリー・ストリートとグランド・ストリートの角に130年前から店を構えるアレバ・デイリーは、新型コロナ危機で経営難に陥った。残された営業日は、1カ月を切っている。

現オーナーのカレン・キングは10年前、夫チャチャとその友人の俳優トニー・ダンザと共同でアレバ・デイリーを買収。夫は2015年に亡くなったが、キングは経営を続けると決断した。だが、パンデミックが起きると観光客相手が中心のリトル・イタリーの店は次々と休業に追い込まれ、負債がかさむようになった。

「3月5日までに店をたたむことになっている」とキングはNBCニューヨークに語った。

アレバ・デイリーは新鮮なチーズとサンドイッチが地元で人気の店だ。商売は少しずつ日常に戻りつつあったが、店舗賃料の支払いが2年遅れており、破産を申請した。

裁判所記録によると、賃料は月2万3756ドル(約310万円)。パンデミックが始まってから滞納を重ねた家賃は62万8000ドル(約8250万円)近くに上り、連邦破産法第11条の適用を受けた後、家主との長引く法廷闘争が繰り広げられた。

キングは2022年4月、家賃を払うつもりはあるが、時間が必要だと訴えた。最終的に、リトル・イタリーの店舗を3月に明け渡す代わりに、店が抱えた多額の負債を免除されることで家主と合意に達した。

リトル・イタリーは歴史的にイタリア人が多く住む地区で、キャナル・ストリートからヒューストン・ストリートにかけて、ラファイエット・ストリートとバワリー地区の間に広がる。1880年代にナポリやシチリアからの移民が大勢集まってできた街だ。現在はマルベリー・ストリートを中心に、流行最先端のアパレルショップやニューヨークで最もホットなバーが軒を連ねている。

パンデミックによる経済的負担やロシアのウクライナ侵攻がもたらした世界的な経済不安を脱却しようともがいているのは、アレバ・デイリーだけではない。

マンハッタンの小売市場は2022年第4四半期も成長基調を維持したが、伸びはほんのわずかだった。事業用不動産サービスのCBREの報告書によれば、マンハッタンのショッピング街16カ所で、1階の小売空き店舗数は6四半期連続で減少したものの、前四半期の229店から222店に減ったにすぎない。 一方、賃料も小幅ながら上昇。第4四半期の平均募集賃料は1平方フィート(約0.028坪)当たり615ドル(約8万円)で、第3四半期から1.2%、前年同期比では2.9%の値上げとなった。

キングはアレバ・デイリーについて「胸が張り裂けそうだ。心が折れそうだが、私は闘う」と報道機関に語っている。ニューヨークの老舗が閉店間近だとのニュースが広く報じられれば、店を救う道が開けるかもしれないとして、希望を捨てていない。130年の伝統を守りながら、別の場所で店を再開したいとしている。

forbes.com 原文

編集=荻原藤緒

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