米国の戦後の景気循環を振り返ると、2年物国債の利回りが10年物国債を上回る「
逆イールド」は、リセッション(景気後退)入りを高い確度で予告してきた実績がある。米国債市場ではしばらく逆イールドが続いていて、足元ではその幅も広がっている。つまり、リセッションが迫っているというサインを発している。半面、労働市場は違った見方を示している。1月の雇用統計では農業分野以外の就業者数が市場予想を大きく上回って増え、失業率も歴史的な低さに下がっている。米国の国内総生産(GDP)の大半を個人消費が占めることも考えると、雇用が伸びているときに米経済がリセッションに陥る可能性は低いように思われる。はたして米国は2023年にリセッションに突入するのだろうか?
イールドカーブ
ニューヨーク連銀はイールドカーブをもとに2022年12月時点で、米経済が12カ月後にリセッションに陥る確率を47%と算出している。高い数字だ。さらにいうと、過去4回のリセッションの場合、1年前に示されていた確率はこれよりも低かった。
イールドカーブがリセッションを予測する指標の1つになり、過去にかなり正確でもあったのには、それなりの根拠がある。とはいえ、どんな経済指標も完全ではない。イールドカーブは今回は見通しを誤っているかもしれない。いずれにせよ、イールドカーブがフォワードルッキング(先見的)な指標だという点は忘れないようにしたい。言い換えると、イールドカーブが逆イールドというかたちで米経済の先行きに悲観的なサインを灯している以上、今この時点でそれを無視するわけにはいかない。
労働市場
逆イールドが映す悲観的な見方とは対照的に、米労働市場では1月に就業者が前月から51万人あまりも増えた。2022年も毎月40万人以上のペースで増えていたから、その勢いがおおむね持続しているとも言える。また、雇用の伸びはかなり広範な分野でみられる。雇用が一貫して増えている経済は、リセッションに陥る可能性は低くなる。経済成長の主な原動力は個人消費であり、個人消費は雇用の伸びとともに増えていく傾向にあるからだ。つまり、今のところ米国の労働市場にはリセッションの兆しはみられないということだ。