欧州委員会の発表によると、ツイッターは過去6カ月間の偽情報への取り組みについて、完全な報告書を欧州連合(EU)に提出できなかった。
報告書では、EUが改定した偽情報に関する行動規範の順守についてプラットフォームの取り組みの概要を示すこととなっていた。だが、ツイッターの報告書は不完全でデータが不足しており、ファクトチェッカー(事実確認機関)との連携に関する情報も記載がなかったという。
EUは、Alphabet(アルファベット)傘下のGoogle(グーグル)やMeta(メタ)、Microsoft(マイクロソフト)、TikTok(ティックトック)、Twitch(トウィッチ)など数十社のIT企業に順守状況の進展報告を求めたが、不完全な報告書を提出したのはツイッターだけだったとしている。
偽情報に関する行動規範を推進する欧州委のベラ・ヨウロバー副委員長(価値観・透明性担当)は「ツイッターの報告書が他社に後れを取っているのを見て失望した」とし、偽情報対策への「より真剣な取り組み」を期待すると述べた。
EUの偽情報に関する行動規範の順守は任意だが、署名した企業がコンテンツを適切に管理できなかった場合、世界年間売上高の6%に相当する罰金が科される恐れがある。ツイッターはマスクのCEO就任前に規範に署名していた。
だが、マスクが断行した大幅な人員削減、絶対的な言論の自由の約束、ドナルド・トランプ前米大統領ら永久凍結されていたアカウントの一部復活などの抜本的な方針転換を受け、プラットフォームの能力や主要な問題に取り組む意志をめぐって規制当局は苛立ちと懸念を強めている。EU規制当局はマスクに対し、ツイッターはユーザー保護のためもっと対策を講じなければならないと繰り返し警告してきただけに、完全な報告書を提出できなかったことは新たな刺激材料となる。ツイッターがEU本部のあるブリュッセルのオフィスを閉鎖したことも、両者の関係悪化につながっている可能性がある。
ツイッターはまもなくAPIへの無料アクセスを終了する予定だが、APIはプラットフォームを調査し、政治的偏向や誤情報などのトピックを監視する研究者らにとって不可欠な機能だ。EUのジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表は、特にロシアがウクライナをめぐってプロパガンダを拡散し、対策強化が必要となっている中で、偽情報と闘う取り組みを阻害しかねないと警告した。ヨウロバー副委員長もこれに同調し、ロシアが展開する「本格的な偽情報戦争に対し、各プラットフォームは責任を果たさなければならない」と語った。
偽情報に関する行動規範に署名した企業は半年ごとの報告書提出に同意しており、ツイッターは他社とともに、7月に次の報告書を提出する見通し。
(forbes.com 原文)