今後の生活については「私自身は子育てをしているので日本ではパートタイムなどで働くのが現実的でしょう。まずは夫がフルタイムの仕事を得て、安心して生活できるように長期ビザを得たいと思います。タリバン政権の間は、女性のあらゆる権利が奪われているので娘の未来のため、新しいキャリアを築いていきたい」と語った。
企業のおもてなしとマッチングの狙い
約2カ月の企画準備期間で、企業側が特に注力したのが、ハラルフード対応だ。普段の「TAKIBI & Co.」では、経営者らが焚き火を囲みながらお酒も交えてBBQをして交流できるのが売りのイベントだが、イスラム教では酒類やイスラム法上適切に処理されていない肉はNG。三星毛糸の社員が、アフガン避難民をおもてなしできるようにアフガン料理のレシピを調べて、ハラル対応の食材を調達した。初めてのムスリム対応だったため、事前にアフガンの参加者に不明点は確認した。
例えば、BBQ道具はしっかりと洗えば普段使用しているものでOKだった。スパイスなどはハラル認証のあるものを調達した。また試作をしてみて味にもこだわった。
当日、社員が準備したのは、アフガニスタン煮込み料理のショルワやサラダ。ショルワは、トマトをベースにした熱々のスープに人参やジャガイモ、ラム肉がゴロゴロと入っていて、スパイスがよく効いていた。このほか、岐阜モスクの近くにあるパン屋からハラル対応のパンを提供した。避難民の参加者からは「アフガニスタンで食べるよりおいしい」という声も挙がったほどだ。
なぜここまでおもてなしを徹底して、難民人材と企業の出会いの場づくりを手がけたのだろうか。三星グループ代表の岩田に聞くと、意外な答えが返ってきた。
「何気ない後押しがアクションに繋がっていくと思うんです」
元々、WELgee代表の渡部を通じて難民問題については知っていたが、岩田自身が経営者として直接関わりのある問題とは認識していなかった。たまたま渡部のFacebookの投稿で、名古屋大学にもアフガン避難民の人たちがいると知ったことで「身近にいるんだ!というローカル性が後押しになった。ここに逃げてきたなら、できることをしなくては」という思いで突き動かされたという。
発案から企画の始動まで、準備期間はたったの2カ月程度。民間ならではのスピード感で実現した。「これからは、事業の真ん中に『社会性』をもつことが当たり前になっていく」と、岩田は語る。
「せっかく縁あって名古屋にいる優秀な難民人材と繋がり、学び合うフラットな関係性が築けたら嬉しい。今回の企業参加者は、問題をちゃんと知ろうとした経営者やリーダー層たち。これを機に難民人材についての関心は民間だけでなく、地方行政にも波及しています。難民人材の就労という形に繋がれば最高ですね」
「ローカル企業も事業の真ん中に社会性をもつのが当たり前になっていく」と話す三星グループ代表の岩田