三星毛糸の岩田社長が、難民人材に関心のある企業側の疑問として「最初からフルタイム雇用となると正直不安もある。その場合、繋がりのある会社と連携して週に何日か働いてもらうのはありですか?」と質問。WELgee担当者が「フルタイムでなくとも、嘱託職員、契約社員などの雇用形態で働いてもらうことが可能」と回答。渡部代表は「まず、どんな人か知り、ミスマッチを防ぐためにもインターンシップやお試し雇用から始めていただくと良いと思います」と語った。
また「スタートアップで働くことはポジティブか」という質問には、「ベンチャーや大企業にこだわりがある人もそうでない人もいて、人によりますが、職種・専門性だけでなくカルチャーヒットしていくかが大切。将来的に起業を考えていて、日本で働いた起業とパートナー関係になりたいと思い描く人もいます」と渡部が答えていた。
アフガン人材の生活再建の思いと、大きな夢
アフガン避難民をより身近に知ってもらうため元留学生の参加者たちの経験を語る「リアルトーク」では、7人が登壇。一人ひとりが自己紹介と夢、名古屋生活での思い出などを語った。
彼らは名古屋大学にかつて留学し、国際関係や政治法について学び、タリバン政権再樹立前のアフガニスタンで研究職や省庁などで働くエリート層。現政権では迫害リスクの高い人たちだ。
このうち、30代の男性Sさんはアフガニスタンで法務や政策立案の仕事を元々しており、タリバン政権下で失業し、家族とともに名古屋大学を頼って来日した。参加者の前で「私のビッグドリームは、日本で法務や事務のエキスパートとして働くこと」と静かに夢を語った。登壇後に生活再建への思いを改めて聞いてみた。
Sさん自身の心の内には「アフガニスタン情勢が安定したら国に戻りたい」という思いもあるが、いまは元々暮らした経験のある日本で「ゼロから再建したい」気持ちが強い。現在、日本語習得のため教育機関で勉強しており、まずは工場勤務など職種を問わず、キャリアをスタートしたいという。
また彼のビザの滞在期間は1年間で、ことし5月まで。「まずは仕事を見つけて法的地位を得て、安心して暮らしたい」と語る。ブルーカラーの仕事への抵抗感について聞くと「問題ないです」ときっぱり。そしてこう続けた。 「私は、すでに自分の国を失っています。日本でゼロからの機会をもらえていること自体がうれしい。命を救ってくれた名古屋大学やNPOにはとても感謝しています。アフガニスタンに戻れば収監され、拘束されてしまうでしょう。アフガンの現状は悪化する一方で悲しいですが、悲観的になるのは嫌なので日本での機会を大切にして、前を向いています」