5.クラウドにおける「マネーロンダリング」
ジェネレーティブAIのベースには、すべてのアプリケーションを構築するために用いられるコストが高いコンピューティング・インフラが存在する。マイクロソフトは、OpenAIに100億ドル(約1兆3000億円)を投資したが、その大半は同社のクラウドサービス「Azure」関連のコンピューティングコストに費やされると予想されている。このことからもわかるように、インフラのコストは膨れ上がっている(マイクロソフトとOpenAIは、複数年に渡って数十億ドルの投資が実行されるとしている)。
Stable Diffusionと類似したAIモデルを運用し、評価額が20億ドルに達した「ハギングフェイス(Hugging Face)」のCEO、クレム・ドゥランジュ(Clem Delangue)は「現状は透明性が欠けており、機械学習に必要な本当のクラウドインフラコストがわからなくなっている」と語る。
これらのコストの一部は、チェックされないまま膨らんでいるように見える。ドゥランジュは、こうした状況を「クラウド・マネーロンダリング(Cloud Money Laundering)」と呼んでいる。
6. AIの最終ステージとされる「AGI」
AIの究極の進化形とされるのが、AGI(Artificial General Intelligence、汎用人工知能)と呼ばれる、意識を持ち、自己改良が可能で、理論的には人間の管理を超えることが可能な人工知能だ。AGIはまだ実現していないが、OpenAIの最初の寄付者であるイーロン・マスクはその影響を懸念して、2019年2月にOpenAIとの関係を絶ったとされている。サム・アルトマンは、AGIが完成しても人類はそれを認識できないと考えている。このため、OpenAIはユニコーン企業としては珍しい2つの仕組みを持っている。1つは「capped-profit(利益上限つき)」メカニズムと呼ばれるもので、株主に一定の利益を還元した後、それを超える分は非営利団体が管理する仕組みだ。
もう1つは、競合企業が安全なAGIの開発に近づいた場合、OpenAIは自社の研究を停止し、競合のプロジェクトに参加するという合併条項だ。アルトマンは、AGIが実現すれば資本主義を壊し、世界がより良い方向に向かうと考えている。
(forbes.com 原文)