200社一挙掲載! 日本のスタートアップ大図鑑

イラストレーション=ファビオ・ブオノコーレ

高まるスタートアップ5カ年計画への期待

2022年7月16日、東京・虎ノ門。日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)が開催した定時会員総会に意外な人物が姿を現した。内閣総理大臣の岸田文雄だ。肝入り政策「新しい資本主義」の重点施策として、同年1月に岸田は「スタートアップ創出元年」を宣言。スタートアップの「5年10倍増」を視野に五カ年計画を策定する方針を掲げた。総会に自ら駆けつけたことは本気度の高さをうかがわせた。

関連する政策は続々と公表されている。スタートアップ担当大臣のポストも新設された。業界は総じて歓迎ムードだ。「公式に岸田政権がスタートアップを応援してくれる意義は大きい」とANRI代表パートナーの佐俣アンリは言う。

五カ年計画は22年内に策定の見込み。10月には重点事項の抄本が公表された。1.スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築、2.事業成長のための資金供給の強化と事業展開・出口戦略の多様化、3.オープンイノベーションの推進、を柱に「全部盛り」といえるほどの各種施策が取りまとめられている。

インキュベイトファンド代表パートナーの村田祐介は、「人・金・モノ・情報というすべてのスタートアップに関連するKPIを5年で10倍にするという考え方で、非常に歓迎すべきこと」と話す。

注目したい施策のひとつが、イノベーションを資金面で支援するSBIR(中小企業技術革新制度)の抜本拡充だ。従来は研究開発に対する補助金交付が中心だったが、ビジネス化に向けた実証実験や公共調達が強化される方針。同制度に基づく21年度予算は70億円だったが、22年度は2060億円へ拡大する方向で最終調整していることも明らかになった。米国では、モデルナやテスラ、スペースXなどがSBIRによる支援で大きく成長した実績がある。期待は大きい。

2022年のIPOは苦戦、上場時期の見直しが進む

2022年の国内スタートアップによるIPO(新規株式公開)は苦戦を強いられた。米国の金融引き締めに伴う株価調整で、相対的にスタートアップの評価額は割高となり、上場しても大きな時価総額がつきにくい状況に。

22年上半期のIPO初値時価総額ランキングを見てみると、1000億円を超えたのはVTuber事務所「にじさんじ」のANYCOLOR一社のみで、大部分は200億円以下。昨年と比べて大きく落ち込んだ。AnyMind GroupやZEALSなど、上場承認後にIPOの延期を決断し、未上場市場で新たな資金調達を行うケースも見られた。上場する時期を見直すスタートアップは少なくない。先行きの不透明さから、「急がば回れ」の判断を下す起業家が増えている。

国内スタートアップのIPO初値時価総額ランキング

2022年上半期
ANYCOLOR 1442億円
M&A総合研究所 465億円
イーディーピー 208億円
坪田ラボ 199億円
トリプルアイズ 149億円
モイ 118億円
マイクロアド 115億円
サークレイス 95億円
メンタルヘルステクノロジーズ 84億円
マイクロ波化学 83億円

2021年
PHCホールディングス 3836億円
ビジョナル 2544億円
Appier Group 2027億円
セーフィー 1646億円
ネットプロテクションズホールディングス 1329億円
プラスアルファ・コンサルティング 1089億円
エクサウィザーズ 816億円
ウイングアーク1st 623億円
スパイダープラス 547億円
ココナラ 493億円
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編集=フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.101 2023年1月号(2022/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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