200社一挙掲載! 日本のスタートアップ大図鑑

イラストレーション=ファビオ・ブオノコーレ

日本に有望なWeb3起業家が少ない理由

渡辺創太◎ステイクテクノロジーズCEO/Astar Networkファウンダー

次世代の分散型インターネットとして期待されているWeb3。しかし現状、日本国内に有望なWeb3起業家はほとんどいない。これにはいくつか理由がある。わかりやすいのが税制や法規制の問題だ。

例えば、日本では法人が保有するトークンが税制上の「活発な市場が存在する暗号資産」に該当する場合、現金収入が生じていなくても、含み益に対して期末時価評価課税をされ、多額の納税義務が生じてしまう。ステイクテクノロジーズの本社が2020年に東京からシンガポールに移転したのもそのためだ。納税のために自前のトークン「ASTR」を大量に売却すれば、市場が崩壊する恐れがあった。

政府は「骨太の方針2022」にWeb3推進に向けた環境整備の検討を盛り込むなど、状況は好転しつつある。ここで重要になのが、起業家側のマインドセットだ。分散型ネットワークで世界をつなぐWeb3では、海外の事業モデルを日本に輸入するタイムマシン経営のような発想は通用しないため、最初から世界を相手に戦う必要がある。

Web3の先進国とはいえない日本で、環境が整備されるのを待ってから腰を上げるのでは勝算が低い。自分たちが将来、日本に逆輸入するくらいのつもりで、先んじて世界で成果を収めるという意識が必要だ。数少ない日本人の優秀なWeb3起業家たちは、すでにシンガポールやドバイ、スイスなどを主戦場として活動している。

そしてWeb3は、技術による差別化以上に、マーケティングやビジネス開発がプロジェクトの明暗を分ける段階に入っている。「発明」から「実装」に焦点が移るなかで、日本政府にイノベーションと投資家保護を両立させるフレームワークを整備してもらうために、私自身も口先だけでなく結果を出し切り、成功モデルを示していきたい。

編集=フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.101 2023年1月号(2022/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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