アート

2023.02.05 11:30

2023年は「工芸とビジネス」が繋がる年に KOGEIの未来

奈良祐希が考える、日本らしさ

──国際的に活躍されるなかで、現代アート化する「KOGEI」としての評価をどう感じていますか。

作品自体が「KOGEIだね」って言われたことはありませんが、欧米のアートフェアや展示会に出展していると「日本っぽいね」とよく言われます。海外で好まれてきたジャポニズムは、絵付や抹茶茶碗などのイメージがありますが、なぜ自分の作品がそう言われるのか。自分なりに考えてみると、やはり境界の話にたどり着きました。

「日本の建築っぽい」と言われることもありますが、欧米の人が想像する寺社仏閣は、障子や蔀戸(しとみど)といったアイテムによって、外の庭と内側の建物が緩やかに繋がっています。モノで圧倒する超絶技巧の視点から抜け出して、軽さ・薄さ・繊細さ・儚さなどの哲学に日本らしさを感じられているのかもしれません。確かにヨーロッパは石積みの重厚な建築物が多く、西洋の重たい世界観とは異なります。

また、作品には動的と静的なものが共生しています。作品づくりをしていると「土が生きている」と感じることがあります。実は、焼いている間に作品はゆらゆらと動いたり、予期せず急激な乾燥をしたりもする。一方、建築は恣意的かつ合理的に線を引き、組んでいくので静的なもの。作品からは、静けさの中にある動きという相反するものが感じられるのではないでしょうか。

金沢発・工芸アートフェアの可能性

「KOGEI Art Fair Kanazawa」に出展された奈良の作品。写真=​​広村浩一(Moog LLC.)

「KOGEI Art Fair Kanazawa」に出展された奈良の作品。写真=​​広村浩一(Moog LLC.)


──世界最大級の現代アートフェア「アート・バーゼル」にも出展されるなか、金沢で工芸に特化したアートフェア「KOGEI Art Fair Kanazawa」に出続ける意味とは。

「KOGEI Art Fair Kanazawa」は昨年12月に6回目が開かれましたが、初回から出展しています。年に1回、作家として生の情報を交換できる良い機会になっています。作家同士の世代を超えた交流が活発に行われることで、感情が揺さぶられることもプラスに捉えています。

また個人的には同世代の仲間と会っていろんな話をするなかで、工芸的な価値観をブラッシュアップでき、自分の世界が広がっていく感覚があります。

──出展作家として「KOGEI Art Fair Kanazawa」がどうなっていくと良いと思いますか。

金沢らしさを育むことと同時に外からの劇的なスパイスも大切だと思います。今回は韓国のギャラリーが出展されていましたが、アジアや欧米などの作品も多くあることで、より金沢らしさや日本らしさが見えてくると思います。一方で、他の国の作品との共通性を見つけたり、パラダイムシフトも起こると思います。

アートフェアの醍醐味はいろんなギャラリーが参加して、交流が深まること。コロナ禍で私たちは「箱が必要なくなった」ことを痛感しました。決められた時間に決められた場所に行かなくても良い。アートフェアでも、ギャラリーごとの「箱」を取り払い、交流することでより進化していくのではないでしょうか。

「KOGEI Art Fair Kanazawa」の会場。写真=​​広村浩一(Moog LLC.)

「KOGEI Art Fair Kanazawa」の会場。写真=​​広村浩一(Moog LLC.)

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文=督あかり

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