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2023.02.06

ビル・ゲイツが独白「私が8兆円を寄付する理由をお話ししましょう」

ビル・ゲイツ / photograph by John Keatley

「例えば今回と同様の規模の大型寄付をあと2回ほどすれば、番付の目立つ順位からは外れるでしょう。上位からは消えるはずです」とゲイツは言う。

「番付から完全に外れるまでにはしばらくかかると思いますが、私の進む道ははっきりしています」

21年のメリンダとの離婚を経て、今回ゲイツが財団への200億ドルの資金譲渡を発表したことの意味は大きい。ふたりの関係性が世界に与える影響は計り知れないものだ。

例えばジェフ・ベゾスとマッケンジー・スコットが離婚した際は、財産はすっぱり二分され、その結果スコットは、この10年で最も影響力の大きい慈善家ともいえる存在として力を発揮するようになった。

一方でゲイツとメリンダの場合は、共同で世界最大の財団を運営しており、その財団は低・中所得国の感染症対策に取り組むグローバルファンドや予防接種率の向上に取り組むGAVIワクチンアライアンス、ポリオやマラリアをはじめとするさまざまな疾病をなくすための事業の推進力になっている。ふたりの別離後の関係性は、国際的な重要性をもつ問題なのだ。

ふたりは離婚後、将来の協業関係の可否を決めるために設定した2年間という期間の最中にいる。片方が現状維持に同意しない場合、ゲイツはメリンダが別途展開する慈善活動に資金を提供することになる。とはいえ、ゲイツによると、これまでのところ問題はない。

ビル&メリンダ・ゲイツ財団共同会長のメリンダ。マイクロソフト社員だった1994年にビルと結婚、3人の子をもうけ、2021年に離婚。/Getty Images

ビル&メリンダ・ゲイツ財団共同会長のメリンダ。マイクロソフト社員だった1994年にビルと結婚、3人の子をもうけ、2021年に離婚。/Getty Images


「今後もふたりでずっと財団を運営していけると、いままでのことが立証していると思います」。今回の寄付では、3カ月前にまずメリンダと、財団の最高経営責任者(CEO)であるマーク・スズマンに相談し、最終的にはバフェットと財団の理事会に議論に加わってもらった。その間、不透明な景気状況があったが、ゲイツが方針を変えることは一切なかった。メリンダの後押しがあったからだ。

「離婚という難しい時期でも、幸いなことに私たちは財団で協力して建設的な仕事をすることができました。財団に関するメリンダと私の考えはあまりに一致していて、いつも驚かされます。私よりメリンダのほうがよくわかっていることもありますから、互いに支え合っているのです。メリンダの意見は、そのどれを見ても、“私たちはこの財団を運営する素晴らしいパートナーであり、これまでもずっとそうだった”ということを物語っています」

ルワンダへ行ったメリンダは、英連邦諸国の元首が集まった会議に出席。セネガルも訪れて、現地の報告を毎日書き送ってくれたという。「こんなことを目にした、あんなことを考えた」と。

財団の将来を決めた、バフェットの教え

将来、ゲイツ財団は年間90億ドルの拠出額を100億ドルに引き上げる可能性はあるのか。ゲイツ自身も100億ドルのほうが切りのいい数字であることは認めるが、増額については2026年まで待つつもりだと語る。

そのころは、財団が拠出額の増額をどのように生かせたかが見えるからだ。「90億ドルを上限に定めているわけではありません。今回財団に譲渡する資産とそれがどのような成果を上げているかについて、もっとずっとよくわかっているでしょう」
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文=ランドール・レーン 翻訳=木村理恵

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