世界一の富豪アルノー率いるLVMH、年間売上高が過去最高の11兆円超に

LVMHのベルナール・アルノー会長兼最高経営責任者(CEO)(Getty Images)

フランスの高級ブランド大手、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンの2022年の年間売上高は過去最高の792億ユーロ(約11兆1600億円)に達し、経常利益も211億ユーロと前年から大幅に増えた。ルイ・ヴィトンをはじめとするファッションブランド部門などが好調だった。海外旅行の回復も追い風になっている。

5つある部門のうち最大のファッション&レザーグッズ部門の売上高成長率(為替変動や買収などの影響を除く、以下同じ)は20%と過去最高を記録し、グループ全体の17%を大きく上回った。主力のルイ・ヴィトンの年間売上高は初めて200億ユーロを超えた。この部門にはほかにクリスチャン・ディオールやティファニーなども含まれる。

次に規模が大きいセレクティブ・リテーリング部門の売上高も17%増と好調だった。化粧品や香水の専門店セフォラが売上高、利益ともに過去最高を更新し、成長をけん引した。セフォラは米国で百貨店のコールズと提携して店舗網を拡大しているほか、近く英国への進出も予定している。ただ、免税店のDFSは中華圏からの旅行者の客足が十分に戻っておらず、苦戦が続いている。

ベルナール・アルノー会長兼最高経営責任者(CEO)は投資家向けの電話会議で、コロナ禍や厳しい地政学的状況といった困難な時期にありながら、LVMH は2019年以来シェアを拡大していると語り、自社製品の「品質と値打ち」を強調した。

投資会社ハーグリーブス・ランズダウンのリードエクイティアナリスト、ソフィー・ルンドイェーツは「アルノーの帝国は過去5年でその価値を200%以上膨らませており、勢いに陰りは見られない」と述べている。「LVMHには非常に信頼できる顧客基盤がある。超富裕層は景気の浮き沈みに左右されないし、物価が上がったところで支出は減らさないだろう」と背景を説明している。

LVMHは事業の平均営業利益率も26.6%と高く、高級ファッション・アクセサリー事業ではさらに高い。ルンドイェーツは、デザインとマーケティング、販売の好循環を継続できている点にLVMHの「真の強さ」があるとみている。また各国、とりわけ中国が国境を再開し、旅行者が戻ってきていることからも、LVMHは恩恵を得ていると分析している。

アルノーは、2022年の好業績を踏まえ「自信をもって2023年に臨む」とする一方、「現在の不透明な情勢に鑑み引き続き警戒していく」考えも示している。

フォーブスのリアルタイム世界長者番付でトップの座に君臨し、現在73歳のアルノーは事業の継承計画に着手している。

forbes.com 原文

翻訳・編集=出田静

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