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2023.02.06

ビル・ゲイツが独白「私が8兆円を寄付する理由をお話ししましょう」

ビル・ゲイツ / photograph by John Keatley

一方で、ゲイツの盟友、ウォーレン・バフェットは、自身のゲイツ財団への寄付について自身の死後10年以内に全額が活用されるように指示している。

「“未来の問題には未来の富豪たちに取り組んでもらえばいい”と、バフェットには何度も言われています」

これまでにバフェットが実際に寄付した、または寄付用に取ってあるとされる金額は総額560億ドル(約7兆3840億円)だ。この寄付は、ゲイツ財団にいつか流れてくる巨額の財源であり、その活動を企画する財団の内部関係者たちに「プロジェクト・リンカーン」と呼ばれているとされる。

ただし、意外な展開を米ウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。バフェットには、最終的に何百億ドルにもなる、最後のまとまった寄付金がある。その寄付金を、亡き妻が立ち上げた、中絶の権利に大きな力を入れているスーザン・トンプソン・バフェット財団に贈るかもしれないというのだ。

「バフェットの惜しみない寄付を当然のように期待しているかのような振る舞いは、決してしたくありません」と語るゲイツは、それでもその寄付金の大部分を自身の財団が受け取ることになると考えている。

「それが変更されると考える理由はありません。ウォーレンには、今回の寄付の発表内容を数日前に送ったのですが、大喜びしていました」

いずれにしても、バフェットは影響を与えてきた。「私はバフェットに大いに感化されていますので、私自身の投資を正しく理解する方法や慈善活動の一般的な手法において、自分で考えたと言えるものはほとんどありません」。

「未来の問題には未来の富豪たちに取り組んでもらえばいい、とバフェットには何度も言われています」とゲイツ。/Getty Images

「未来の問題には未来の富豪たちに取り組んでもらえばいい、とバフェットには何度も言われています」とゲイツ。/Getty Images


ゲイツは、バフェットのように死後10年という期限で自身の財団を閉鎖するとまでは明言しないが、もっとも長期的な事業計画に時間と予測を立てる猶予を与えることを考慮したうえで、「四半世紀かけて段階的に財団を縮小して終わらせる可能性はある」と語る。

ゲイツによると、最大の暗雲は有害な政治だ。それは、民主主義が脅かされているレバノンやスリランカといった諸外国や米国内にも存在する。

新型コロナウイルスのパンデミックは依然として「人々が認識している以上に悪い状況」とゲイツは言うが、ウクライナ戦争や景気の悪化もあり、「グローバルな視点で考え、複雑な取り組みを行う意欲が、少なくともかなり低くなっている時期のように感じられる政治的環境」もあるという。

しかし、世界が前向きな見方に飢えているこの時代に、ゲイツは前向きな未来を予想しようとしている。特に、ゲイツ財団にとって長年にわたって手ごわい分野である教育における、個人に合わせたデジタル学習の飛躍的な進歩については楽観的だ。

「これまで以上に希望をもっています。新しい数学の授業では、この分野で私たちができるインパクトの大きさが本格的に見え始めていますから」。トイレの普及やデジタル金融におけるインクルージョンなどの他の分野についても同様だ。

「私は多くのことについて楽観的にとらえています」とゲイツは言う。私たちは、資金拠出の加速が有意義な変化をもたらすことができるのか、これから目の当たりにしようとしている。


ビル・ゲイツ◎1955年、米シアトル生まれ。純資産額約1020億ドルで、ビリオネアランキング世界5位。75年に設立したマイクロソフトを2000年に退任。同年に当時の妻メリンダと世界最大の民間慈善団体、ビル&メリンダ・ゲイツ財団を設立。

文=ランドール・レーン 翻訳=木村理恵

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