日本でも、全品目のインフレ率は0.5%(年初)から3.8%(11月)まで上昇した。欧米のインフレ率に比べれば低いが、日本では1991年以来の水準である。米国の連邦準備制度理事会が金利を引き上げる一方、日本銀行が金利を引き上げなかったことで、年初は1ドル115円だったが、10月には1ドル150円まで一時円安が進行した。
22年12月20日に日銀は、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)で決めていた10年物国債の金利変動幅を、それまでの0〜0.25%から0〜0.5%へと変更した。日銀の黒田東彦総裁の任期が終わる今年4月まで政策変更はない、と予想していた市場の反応は大きかった。円は、約3%の円高となり、株価(日経225)は3%の株安となった。
この変更前の数カ月間、上限の0.25%に張り付いていることが多く、日銀が0.25%で大量の国債を購入していた。したがってこの変動幅の拡大は、事実上、10年物国債金利の上昇を容認することになった。日銀による政策変更の直後、10年金利は0.45%まで急上昇した。
市場では「事実上の利上げ」「日銀の金融引き締めの第一歩」として受け取られた。インフレ率が3ポイント以上上昇していたので、10年国債の名目金利の変動幅の0.25ポイント引き上げも、実質金利で見ると利上げとは言えない。
また、政策金利のマイナス0.1%には変更はなかった。黒田総裁が記者会見で強調した「利上げではない」ということはそれなりに説得力がある。黒田総裁はまた「金融引き締めの一歩でもない」とも強調した。しかし、「一歩」ではないかもしれないが、「一歩を踏み出す準備」であることは間違いない。
昨年11月のインフレ率は、全品目で3.8%、生鮮食品を除くコアで3.7%、生鮮食品とエネルギーを除くコアコアで2.8%であった。インフレ目標である2%を超えても日銀が利上げ、引き締めに踏み込まないのは、10月に公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)の審議委員による23年のインフレ率の予測では、2%を切ると予想しているからだ。