国内

2023.02.02 16:00

金融引き締めへの第一歩か?

伊藤隆敏の格物致知

しかし、コアコアでも2%を超えているということは、ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー価格上昇の影響が23年に剥落したとしても、2%を超えている可能性が高いということである。これまでは、デフレから脱却したアベノミクスの期間ですら、コストが上がっても需要が高まっても、価格を変えないという企業が多かった。
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消費者も、少しでも値上げする企業や店を嫌い、購入する店を変えたり、他商品を購入したりといった行動をとっていた。22年後半は多くの商品が値上がりしたが、これは、90年代初めのまだバブルの余韻が残るころ以来の出来事である。

23年には、黒田総裁が10年間達成することができなかった「安定的に2%」というインフレ目標が、達成される可能性が出てきた。そのためには、22年のサプライサイド(コストの上昇)のインフレから、需要牽引型のインフレに変質することが重要である。

また、消費者が安心して2%のインフレを受け入れられるようにするには、連合が要求する5%の賃上げの実現が必要だろう。
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23年にインフレ目標の達成を宣言するような状況になれば、本格的な政策金利の引き上げと、イールドカーブ・コントロールのさらなる変更が正当化されるようになる。長短金利の変更の順序、国債購入額の引き下げ、その後の購入した国債の残高引き下げなど、いくつかの手段を、順序を間違えずに実行することが必要だ。

黒田総裁の後任の総裁は難しいかじ取りを迫られるが、うまくいけば、23年は、インフレ目標政策達成で日銀が「正常化」への道を歩み始める記念すべき年になるかもしれない。


伊藤隆敏◎コロンビア大学教授・政策研究大学院大学客員教授。一橋大学経済学部卒業、ハーバード大学経済学博士(Ph.D取得)。1991年一橋大学教授、2002〜14年東京大学教授。近著に、『Managing CurrencyRisk』(共著、2019年度・第62回日経・経済図書文化賞受賞)、『The Japanese Economy』(2nd Edition、共著)。

文=伊藤隆敏

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