治療抵抗性うつ病、患者を救うカギは早期発見と適切な対応

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精神医学誌「JAMAサイキアトリー」に2022年12月14日付けで発表された研究論文で、治療抵抗性うつ病(TRD:treatment resistant depression)の患者は、大うつ病性障害(MDD:major depressive disorder)のみを発症している患者よりも精神疾患の併存率がはるかに高いと、研究者が警鐘を鳴らしている。TRD患者は、入院する確率が3倍も高いうえに、死亡リスクが23%上昇する可能性があるという。

2018年に医学誌「ランセット」で発表された研究論文によると、障害生存年数(years lived with disability: YLD)に影響を与える要因を世界的に分析したところ、うつ病は、いくつかの病気やケガを凌ぐ上位に位置していた。

MDDの患者を治療する精神科医や内科医は、抗うつ剤を処方し、精神療法を受けるよう助言しており、数カ月や数年で症状が改善するケースもある。しかし、「数カ月が経っても、さまざまな治療法を試しても、症状が改善しない患者が相当数いる」と、JAMAサイキアトリーに掲載された論文には書かれている。

適正な容量の抗うつ剤を一定期間にわたって服用する治療を、2回かそれ以上完了しても症状が緩和されない場合に、TRDという診断が下される。2006年の研究によれば、MDD患者のうち、推定で30%以上がTRDを発症している可能性がある。

「1回目、2回目、または3回目の治療への反応に関する予後因子(治療後の経過を判断するための材料)は、まだ確立されていない。そうした予後因子は臨床医にとって、より厳密な容態確認や介入、支援を必要とする患者を見極める上で役立つものだ」と研究者は述べている。

JAMAサイキアトリーで論文を発表したスウェーデンの研究チームが研究に用いたのは、ストックホルムが管理する医療データベース、ならびにスウェーデン社会保険庁のデータだ。研究対象には、2012年から2017年のあいだにMDDを発症した14万5000人以上の患者が含まれている。そのうちの11万115人は、抗うつ剤を1回かそれ以上服用していた。TRDと診断されたのは、コホート全体の11.1%にあたる1万2765人だ。

「TRDを発症した患者は、医療費の支出が増えたり、不安症やストレスに悩まされたり、自傷行為に及んだり、欠勤したりといったことが増える傾向がみられた。また、病院の外来受診回数の平均が50%以上高かった」と研究者は述べている。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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