これはつまり、2022年の小売販売総額のおよそ16%が返品されたということだ。この返品率は、2年前のおよそ10%から上昇している。
数字だけだとリアルには感じにくいので、この数字を他と比較して考えてみるといいだろう。
・8160億ドルという金額は、NRFによれば、ウォルマート、アマゾン、コストコが2021年に米国で小売販売した額の合計とほぼ等しい。
・8160億ドルという金額は、米国における全ての公立学校の年間予算合計を上回る。
・世界銀行によれば、8160億ドルという金額は、トルコのGDPとほぼ等しく、世界18位の経済大国サウジアラビアのGDPと比べても、わずかに少ないだけだ。
悪夢のような返品
企業は返品処理の業務を外注できるとはいえ、スタッフを雇い、倉庫を借り、輸送費を払い、再販売できる商品を特定する方法を考える必要がそもそもなければ、企業は大いに助かるだろう。再販売できない返品の大部分はアパレルだ。これらは最終的に、インドのどこかで燃やされるぼろ切れの山の上や、ガーナの埋め立て地に行きつく可能性が高い。
ブルームバーグが2022年11月に掲載したリポートは、この問題を覆い隠していた絆創膏をはがすものになった。つまり、ブランドによるサステナビリティの公約(「リサイクルして新たな布地にします!」)と、惨憺たる現実(再利用されるのはわずか1%)を隔てる痛々しいギャップがあらわになったのだ。
一般的な小売事業者の売上純利益率が2.5%に満たない現状では、返品にまつわるコストはとんでもなく高いものだ。
毎年のように懸念が表明されるが、効果的な解決策が出ることはまれだ。2022年には、興味深いサイドビジネスに大きな注目が集まった。一種のゴミ漁りのようなものだ。返品された多種多様な商品が、数パレット(荷役台)あたり数百ドル、数千ドルといった金額で購入されている。
パレットの荷をほどき、救出可能なものを再販することによって、どれくらい稼げるかを計算するユーチューブ動画も大量にある。Woot(ウート)という企業は特売商品として、中身の見えない「bag o’ crap(がらくた袋)」を10ドルで販売した。