テクノロジー

2023.02.01 18:00

月面のガソリンスタンドで燃料補給?「水エンジン」に注目の理由【伊東せりか宇宙飛行士と考える地球の未来#15】

谷本 有香
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せりか:業界からの注目度はいかがですか。

奥原さん:推進機を取り付けることで、衛星の利用の幅が広がりますし、需要が高まっているのを感じています。世界的にSDGsを重視する流れは宇宙業界でも活発化してきていて、海外の宇宙機関や宇宙開発企業の間でも環境に優しいグリーン推進剤(プロペラント)を探す動きが出てきているようです。最近はPale Blueを知ってくださっている方も、増えてきているように思います。

やはり水を推進剤として使っていることを伝えると、すごく驚かれるのと同時に、導入に向けた話が一気に進みますね。実は私も水で動くエンジンに驚かされたひとりなんですよ!


水エンジンを搭載した衛星のイメージ (c)Pale Blue

難しいからこそ挑戦したい。研究者気質の好奇心

奥原さん:Pale Blueのことは2021年10月にシリーズAラウンドの資金調達のニュースを見て知りました。当時は自動車業界の会社で働いていたので、エンジンの燃料と言えばガソリンや軽油、電気でした。だからこそ、水でエンジンを動かせるなんて「ありえんわ!」と思ったんです。

面白くてPale Blueのことを調べていたら、前職で経験がある広報のポジションが募集されていたので、すぐに応募して、2022年2月に入社しました。

せりか:入社されてみて、いかがですか。

奥原さん:前の職場では、すでに出来上がっている広報の体制維持や改善が業務のメインでしたが、スタートアップのPale Blueではゼロから積み上げていくものがほとんどです。海外出張が多くて、海外の宇宙企業の経営者やエンジニア、メディアの方との議論や交渉も大きな学びになっています!

せりか:Pale Blueは、東京大学の研究室からスピンオフして創業した企業だと聞いています。研究から生まれた技術を活かして、製品として販売していくことはやはり難しいのでしょうか。

奥原さん:そうですね。研究とプロダクト化の間には、ギャップがあります。製品開発を進めていく上で出てくる改善点やお客様からのご要望は、必ずしも物理現象がネックになっているとは限りません。なので、航空宇宙分野の研究開発に慣れているメンバーに加えて、民間で製品開発の経験がある異業種のエンジニアが集まってきて、少しずつノウハウが蓄積されてきています。

お客様のニーズに真摯に向き合い、応えていくことは、難しいことです。しかし、水エンジンを導入していただくことで衛星の軌道維持ができるようになり、寿命が延びることで、結果的にスペースデブリを削減に繋がるなど、社会課題の解決に貢献できていることを実感できて、やりがいを感じます!

せりか:社会課題の解決に挑戦するモチベーションの源泉はどこにあると思いますか。

奥原さん:Pale Blueの創業メンバーはとにかく好奇心が強くて、難しいことにもあえて挑戦して、どんどん乗り越えていこうとするタイプです。いろいろな事象が複雑に絡み合った社会課題も、解決していくプロセスを楽しんでいます。

会社が大きくなっていけばエンジニアの雇用創出に繋がり、富の再分配がされて、そこからさらに研究開発が活性化していくサイクルを作れると創業メンバーが話していました。

こういった事業や会社に対する思いを創業メンバーが従業員全員に伝える場があり、距離が近いので、私たちもモチベーションを高く保ちながら働くことができているのだと思います。社内では業務とは関係ないカジュアルな会話をしたり、食事に行ったりすることが多いことも、組織作りでは大切ですね。


社内の様子 (c)Pale Blue
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