メタバースはなぜこんなに分かりづらい? 本来の定義とは

Midjourneyで作成

Facebook社の「Meta」への社名変更、パンデミック下のバーチャルイベントの盛り上がりなどをきっかけに注目を集めるメタバース。

Metaは2022年秋に、VRヘッドセット「Quest」の上位機種となる「Quest Pro」を発売。ブロックチェーン系メタバースのバーチャルな土地は高額で売買され、ハイブランドがバーチャル空間上で最新のコレクションを発表するケースも増えている。

売上高ベースでの世界のメタバース市場規模は、2021年に4兆2640億円だったところから2030年には78兆8705億円まで拡大するという予想も立てられている。


売上高ベースでの世界のメタバース市場規模(総務省情報通信白書

書店には多くの関連書籍が並び、ファッション誌「VOGUE」までが特集を組むほど、世の中の“メタバース”への関心は高まっている。

しかし、こうして盛り上がる一方で、みなさんこうは思わないだろうか?

「色んなところでメタバースと聞きすぎて逆によく分からない……!」と。

そこでこの記事では、近い将来多くの企業が避けては通れなくなるメタバースについて、その正体、すなわちメタバースの本来の定義はなにか。そしてなぜここまでメタバースは分かりづらいのかについて解説していく。

メタバースの定義はなにか?

メタバースには、本来的な「狭義のメタバース」と、バズワード化する中で使われている「広義のメタバース」の2つがあり、その両者を分けて理解することが重要だ。

まずは、本来的な「狭義のメタバース」を知るところから始めよう。その定義は一言でいうと、「3次元版のインターネット」だ。

今は独立して存在している3次元のサービスが 1つ1つのウェブサイトのような形で繋がっていき、それらの世界の間を瞬時に行き来しながら、そこでコミュニケーションを取ったり、経済活動ができるプラットフォームが本来のメタバースだ。

例えば、TPSゲームである「Fortnite」で友達とゲームを楽しんだあとで、「Fortnite」内のワープポートからMetaのバーチャルSNS「Horizon」にアクセスして、同じアバターのまま友達とおしゃべりしたり、「Fortnite」上で稼いだバーチャル通貨で新しいファッションアイテムを買って楽しんだり。そして、しゃべり疲れたらワープポートから「どうぶつの森」に入って先ほど買った服に着替えてキャンプを楽しむことができるような世界……といえばイメージしやすいだろうか。


これは、「メタバース」という言葉を広めた第一人者であるマシュー・ボール氏のメタバースの定義にも合致する。

ところが、現状はどうなっているかというと、3次元版のインターネットとはならず、イケてるウェブサイトが個別で存在している状態に近い。


つまり、本来のメタバースがいまだに存在しないものなのだ。では、毎日のように見聞きするメタバースとは何なのだろうか? それが「広義のメタバース」であり、メタバースを分かりづらい存在にしている原因だ。
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文=梶谷健人

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