WOMEN

2023.02.01

授乳の苦労にさようなら。人工母乳の可能性

Helaina創業者 Laura Katz

乳児を育てるとき、母乳を与えるか、粉ミルクを与えるかの選択肢がある。粉ミルクは500億ドルの世界市場であるにもかかわらず、過去40年間ほとんど技術が変化していない。

食品科学者のローラ・カッツ(29)は「代替肉や代替乳が受け入れられ始めている。粉ミルクの技術革新も必要なはず」と粉ミルクに代わる人工母乳の会社Helainaを2019年に立ち上げた。酵母と発酵技術を用いて実際の母乳に含まれるタンパク質を忠実に再現する。

カッツがアイデアを得たのは23歳のときだ。仕事や自身の母乳が出ないことを理由に母乳を必要とする客に対し母乳を販売する母親の存在を知り、人工母乳開発に誰も成功していないことに気づいた。

「すべての親が母乳育児をするのは難しい。母乳以外のものを与えざるをえない親たちのため、Helainaは乳児用ミルクの成分や味をより本物の母乳に近づけようとしています。母乳の成分を摂取することで乳児は免疫を得られます」

現在臨床試験の初期段階だが、市場で販売し始めれば母乳のような体力的・時間的コストのかからない代替ミルクを広く提供でき、数社による粉ミルク市場の停滞・寡占状態も打破できると期待される。

カッツの元指導教員でニューヨーク大学教授のステファニー・バーディンは「試験管でつくったミルクを乳児に飲ませることに最初は抵抗があるかもしれないが、その利便性と効果で買う人は増えるはず」と語る。母乳をネックに妊娠・出産をためらう女性にとって人工母乳は希望となるかもしれない。


ローラ・カッツ◎カナダ・トロント生まれ。Helainaの創業者、食品科学者、ニューヨーク大学非常勤教授。24歳のとき同校の最年少教授となる。2019年にHelainaを創業。米国版「Forbes 30 Under 302022」に選出。

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=ゲリン・ブラスク

この記事は 「Forbes JAPAN No.101 2023年1月号(2022/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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