事業継承

2023.01.27

トヨタ新社長が豊田章男から学んだ、「できないことをやる」姿勢

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トヨタ自動車は1月26日、豊田章男社長が4月1日付けで代表権のある会長に就任すると発表した。後任は佐藤恒治(さとうこうじ)執行役員だ。

豊田と佐藤には「師弟関係」がある。特に2人の密接なつながりは、1989年に登場したレクサスの歴史のなかにある。

かつてレサクスブランドのチーフエンジニアを任されていた佐藤は、「レクサスGS(ミッドサイズセダン)」の開発中止命令、「LFA(レクサスフラッグシップ3000万円レベルのスーパースポーツカー。今でも高い評価を得ている)」の開発など、現場から不満の声も挙がるような難題を突きつけられてきた。

ときには「できません」と答えたこともある。それに対する社長の回答は「わかってるよそんなこと。できないからやるんでしょ」だ。

佐藤は「『トヨタ家元組織革命』世界が学ぶ永続企業の『思想・技・所作』(阿部修正著、Forbes JAPAN特別編集)」でこう述べている。

「できないものはできない、というのが技術屋の頭です。だけど社長にこう言われました。『今のあなた達にはできないことでしょう。だから出来る自分になればいいじゃない。自分たちが何かを変えない限りこのクルマはできないでしょう。だから自分たちを変えるところからやったら』と。

この言葉が、佐藤の発想を転換させた。

「技術が高度化し、クルマの進化は行き着くところまできた。そうなった時に、新しいクルマが欲しいと思っていただくためには何をすればいいのか、みんな分からなくなっています。技術が新しい価値を創造しない限り、クルマの需要は衰退していくのです」

新体制は4月1日から始まる。2人の新たな「師弟関係」が次のトヨタをどう変えていくのか、楽しみだ。

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文=露原直人

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