北米

2023.01.28

犯罪歴のある労働者、米国で潜在需要高まる

Getty Images

米ハーバード大学が2021年に発表した調査報告書によると、米国で十分に活用されていない労働力は2700万人に上る。これには退役軍人、メンタルヘルスの問題や身体の障害がある人、そして犯罪歴がある人が含まれている。

米シンクタンクのランド研究所は昨年、この問題の規模を浮き彫りにする論文を発表した。それによると、失業中の男性の64%は35歳以前の逮捕歴があり、46%は有罪判決を受けていた。同研究所は、雇用主が必要な人材を見つけられない大きな理由の一つとして、犯罪歴がある人を除外していることを指摘。犯罪歴がある応募者への対応を再検討する必要があると述べている。

ハーバード・ビジネス・スクールが行った別の研究では、現在の人材不足により雇用主の間での認識が徐々に変化し、犯罪歴がある人の雇用に前向きになっている可能性が示唆された。特に、企業が「犯罪・安全保険」に加入している場合、犯罪歴のある人材採用の敷居は低くなる。

研究チームは、犯罪歴がある人の採用を増やすために取れる幾つかの手法の効果を検証した。そのうちの一つが、犯罪歴のある人を雇用する際のリスクにまつわる懸念を解消する犯罪・安全保険だ。その他、以前の人事評価や前科の時期に基づいた候補者のふるい分けや、候補者のパフォーマンスに関する詳細かつ客観的なデータの提供といった手法が検討された。

研究チームは、短期の仕事の求人が掲載されるサイトで、約1000社を対象に実験を行った。このサイトにはホスピタリティーや事務、輸送などさまざまな職種の求人があり、多くは未経験者向けだ。ただ、企業が採用する人材を選ぶのではなく、その仕事の最低要件を満たす全ての人に仕事が提示され、それを応募者側が早い者勝ちで受けられる仕組みになっている。

実験の結果、39%の企業に犯罪歴のある人を採用する意思があったことが分かった。この割合は、顧客対応が必要ない職務で45%に増加。高級品を扱わない企業では51%に達し、人材不足が解消できなく困っている企業では68%まで上昇した。犯罪・安全保険や、人事評価、直近の犯罪歴審査といったオプションが利用できた場合、犯罪歴のある候補者を採用する企業の割合はさらに10%上昇した。

こうした比較的シンプルで安価な手法により、犯罪歴のある候補者が公平な機会を与えられる可能性は大幅に高まる。研究チームは、「こうした手法は労働力の供給量を増やすと同時に喫緊の社会的問題に取り組む上で有望だ」と結論している。

forbes.com 原文

編集=遠藤宗生

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