ロックスターから皿洗いへ ジョン・ボン・ジョヴィ夫妻の「無料食堂」

ジョン・ボン・ジョヴィ

タダで食事させるだけでは意味がない

D:実は、この店のスタッフのうち、有給で雇用しているのは3人だけなんです。1人は、入り口にいる女性。案内係と思われるでしょうが、彼女は訓練を受けたセラピストなんです。あとの2人はメンタルヘルス協会の職員で、スタッフとして店に来てもらっています。この2人は、お金に困って来店した人に直接働きかけ、彼らが生活を立て直し、次の段階に進めるようサポートに取り組んでいます。

でも、来店客を追跡したり、調査票に記入させたりなんてことはしません。うちは政府の助成も受けているわけですし、来店するたびにつらい思いをさせたりしたら、トラウマになりますからね。

J:僕らが店のスタッフと話し合うことがあるとすれば、どうすれば困っている人の助けになれるのか、それだけです。

D:ジョンがいつも問いかけていることがあります。「困っている人のために家を建てることはできる。でも、その人はどうやってその費用を支払うんだ?」。だからこそ、職業訓練や、みんなが自分の家に住み続けられるようにするための援助が重要なんです。

食料支援も同じことです。困っている人にタダで食事を提供することはできますが、それだけではダメなんです。炊き出しの列に並ぶ人たちに食事を提供するなら、同時に、炊き出しの列そのものを短くする必要があるのです。

そのために私たちができることは、困っている人たちが行動を起こし、自ら努力して次の段階に進めるようになるために、力になることです。

──おふたりの活動は、10年後にはどうなっていると思いますか? 目標は?

D:廃業していたいわね。

J:そうなっていたら最高だね!

「JBJソウルキッチン」 は現在ニュージャージー州に3店 舗を展開

「JBJソウルキッチン」 は現在ニュージャージー州に3店 舗を展開

ドロセアとジョン

ドロセアとジョン

ジョン・ボン・ジョヴィ◎1962年、 米ニュージャージー州生まれ。 84年、ロックバンドBON JOVIの ボーカルとしてデビュー。ロック 界のトップを走り続け、アルバム のトータルセールスは1億3000 枚以上を記録。2006年に生活 困窮者支援のための財団設立。

写真=マイケル・プリンス 翻訳=木村理恵

この記事は 「Forbes JAPAN 特集◎私を覚醒させる言葉」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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