ビジネス

2023.02.07

「現状不満足」からのスタート。ポーラがウェルビーイング経営にこだわるワケ

ポーラ代表取締役社長の及川美紀(左)、筆者(右)

悩む社長の姿を社員に見せていく

──今後は、ウェルビーイングな経営を通じて、どのようにポーラを変えていきたいと考えていますか?

社員全員に浸透させるには「対話」が必要です。

例えば、動画で社員に重要な内容を共有したら、視聴後にアンケートを書いてもらいます。

すると、たった1行でも感想を書くために、真剣に見たり、もう1回見返したりするようになります。

そして、もし、アンケートの回答で「よくわからなかった」「あまり納得できなかった」といったコメントがあれば、1つ1つ私が丁寧に答えるようにしています。
 
私が実現したいのは、ウェルビーイングでサステナブルな経営です。ポーラが掲げている理想の社会を実現するためには、腰を据えて永続的幸福とは何かについて考える機会が必要だと感じています。

社内で事業戦略やスローガンを考えることはできますが、そのベースとなる企業理念やビジョンについてディスカッションする機会はあまりありません。そのために、ポーラ幸せ研究所を創設しました。

ポーラが持つ資産や資源を洗い出し、社会課題の解決につながる次のソリューションを生み出していく。自分の可能性を信じて、誰かとつながり、幸福な社会を実現する。その役割をポーラ幸せ研究所が担っていきたいと考えています。

──ウェルビーイングでサステナブルな経営について、現在抱えている課題はありますか?

働き方のマネジメントが一番の課題です。従業員に働き方に関する調査をしたところ、職種や部署ごとの職場環境に応じて、ウェルビーイングな従業員とそうでない従業員がいました。

なので、社会への発信の前に、自分たちの課題に向き合うことが大切だと感じています。社員1人1人がポテンシャルを発揮できているかをきちんと見ていく必要もあります。私も社長として、毎日、組織をどうマネジメントすべきか悩んでいます。

そんな理想と現実の狭間で悩みを抱えている社長の姿も従業員にオープンにしていく必要があると感じています。

どんなに社長が綺麗ごとを言っても、本音でないと社員は違和感を感じてしまうと思うから。


企業理念としてウェルビーイング経営を掲げても、社内で浸透させることはとても難しいことです。それをトップ自らが率先して現場の声をきき行動をし続ける姿に感銘を受けました。

悩んでいる姿を見せたがらない経営者も多いなかで、自らそういった姿をオープンにするという社長としての及川氏の言葉はとても心に響きました。

ポーラがウェルビーイングな経営に取り組む裏側には、現状に満足しない姿勢があり、それが「幸せ研究所」の創設にもつながり、徹底的にやり抜く姿が、結果的に企業の成長になる秘訣なのだと及川氏の話から伝わってきました。

連載:地域経済とソーシャルイノベーション
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文=齋藤潤一

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