薬物を使わない「自発的な覚醒体験」を探求する最新研究

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『Frontiers in Psychology』に掲載された新しい研究は、自発的な覚醒(悟り)という曖昧な現象を探求している。

「スピリチュアルな覚醒とは、認識された究極の現実、宇宙、宇宙意識、または神との直接的な接触、結合、もしくは完全な一体感の体験を突然感じることを特徴とする主観的体験です」と英国グリニッジ大学の心理学者で、この論文の主執筆者のジェシカ・コルネイユは説明する。

コルネイユによれば、文化圏を跨いだ膨大な逸話的証拠にもかかわらず、主流の心理学は現在、スピリチュアルな覚醒についてほとんど知らない。

実際、スピリチュアルの覚醒は、双極性障害や統合失調症などの精神障害に見られる特定の症状と重なるため、医学界では通常、病的なものとして扱われている。

コルネイユは、スピリチュアルな覚醒が精神疾患とどのように相互作用・関連するのかについてはあまり知られていないが、診断可能な疾患がなくても、単独の体験として起こることがあると論じている。

さらに、逸話的証拠によれば、スピリチュアルな覚醒は以下を含む多くの長期的なポジティブな結果をもたらすことが示唆されている。

1. 精神的・肉体的なウェルビーイングの大幅な改善
2. 親社会的および親環境的な行動の促進
3. 精神病理的傾向のリスク軽減

「私は、厳密な科学的研究を行うことで、スピリチュアルな覚醒に対する認知度を高め、脱偏見、脱病理主義に貢献したいと思います」とコルネイユは述べている。

論文の中でコルネイユは、スピリチュアルな覚醒を経験した人々が報告した、心理的・霊的変化のいくつかを紹介している。

1. 意識が第一義的または基本的なものである、現実の客観的なフィルターにかけられない性質として認識されるものについて、内なる深い知見または理解の感覚を経験する。これは通常、宇宙のすべての人、すべてのものとの相互関係の深い感覚をともない、しばしば感謝、エクスタシー、至福、畏敬の深遠な感情を引き起こす
2. 不安や恐怖、特に死への恐怖が減少する
3. 超感覚的知覚の強化、例えば、偶然の一致の増加、自分の人生に望むものを引き寄せる能力の進化
4. 精神的・身体的なウェルビーングの増進(慢性的な痛みがなくなったという報告など)、社会性の向上「使命感」または無私の奉仕をしたいという気持ちの高まり、自然の中でより多くの時間を過ごしたいという気持ちなど環境保護的な行動の増加
5. 物質主義への関心の薄れと、人間関係や進路の変化など具体的な変容
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翻訳=上西雄太

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