企業は、いじめやハラスメントについての方針を厳格化することであれ、行動規範において許容できる範囲と許容できない範囲を明確に打ち出すことであれ、DEIの取り組みを積極的に台無しにするような行動や態度には、より厳しく対処する必要がある。
2022年ワールドカップで大きな注目を浴びたスポンサー企業と言えば、バドワイザーだ。カタール当局は、ワールドカップ開幕まで残り数日という直前になって、スタジアム内ならびにその周辺でのアルコール販売を禁止し、バドワイザーとサッカーファンに衝撃を与えた。
しかしそうした注目は、バドワイザーのDEIポリシーにも向けられる可能性がある。そして、次のような問いに焦点が当たるかもしれない。それは、「アルコール飲料業界は他業界に比べると、そもそも包摂性の進捗が遅れているのではないか?」という問いだ。
デロイトが2022年に発表した「Diversity, Equity, and Inclusion in the Beverage Alcohol Industry Study(アルコール飲料業界における多様性・公平性・包摂性調査)」では、「アルコール飲料業界全体では、過去5年間で、女性を巡る状況が大幅に向上したと思う」と回答した女性はわずか10%だった。また、「自分の働くアルコール飲料企業が、より良い職場づくりを目指して行ったDEI関連の取り組みは非常にうまくいった」と考えている人は20%に満たない。
さらに印象的な調査結果がある。多様な人材を引きつけ保持している業界について、女性回答者に尋ねたところ、アルコール飲料業界は最下位3業界 の1つになったのだ。
ハイネケンUSA CEOの考え
マギー・ティモニー(Maggie Timoney)CEOはまず、アルコール飲料業界は実際に、包摂性という点で他業界より遅れているのかという疑問に答えている。「ビール業界は、以前から男社会だと考えられてきた。そのため、入り込むことができるような業界ではないと考える人が多い。しかし、そうした考えがもはや当てはまらないことを、私たちは知っている。多様なジェンダー、人種、民族を対象に製品を販売している業界としては、従業員構成に消費者層を反映させなければならない」
ハイネケンUSAが発表しているリポート「Behind the Label」の第2弾「Fostering Belonging & Inclusion in the Alcoholic Beverage Industry(アルコール飲料業界における帰属意識と包摂性の促進)」では、調査対象者の多くが、職場でマイクロアグレッション(偏見などにもとづいた日常的な無自覚の差別) を経験したことがあると答えたことが明らかになった。